中東かわら版

№93 カタル:諮問評議員選出にかかわる憲法改正

 2024年11月5日、諮問評議会議員の選出方法の変更をめぐる憲法改正の国民投票が実施された。同議員45人の内15人を首長が任命、30人を選挙で選出する現行の制度から、45人全てを首長が任命する制度に変更するというもので、選挙翌日の6日、投票の90.6%が憲法改正に賛成だったと発表された。内務省発表によれば、投票率は約84%(有権者は18歳以上のカタル国籍保有者)、投票内訳は賛成89%、反対9.2%、無効1.8%だった。なお今回の議員選出方法の変更に伴い、全てのカタル国民が大臣職に就けるようになった。

 

評価

 諮問評議員15名の選挙による選出は2021年10月に初めて実施され、これは翌2022年冬のサッカーW杯を意識した民主化アピールだと、海外からは揶揄された。その後、議員選挙は実施されず、結果として2021年のものが唯一の事例となった。

 タミーム首長はじめ、政府指導部は憲法改正について、国民の分断の解消という意義を強調した。というのも、従来の選挙制度では参政権の所有が1930年時点でカタルに住んでいた人の子孫に限られていた。つまり、それ以降にカタルに移住した人とその子孫は、国籍を持っていても投票と立候補ができなかった(これは、一部の有力部族を政治からパージする機能を果たしていた)。したがって、今回の憲法改正によって参政権をめぐる国民間格差がなくなったわけだが、議員が全て任命となったことを考えればプラスマイナスゼロであろう。

 この点、実質的な変更点と言えるのは帰化国民が大臣職に就けるようになったことである。大臣職についても、やはり従来は1930年以前から住んでいたカタル人とその子孫に限られていたのが、今次改められた。

 海外の報道では、今般の憲法改正を民主化のとん挫や放棄と評価する論調が多く見られるが、もとより民主主義を希求する機運が高いわけではなく、今般の憲法改正によって同国の体制が不安定化するような事態は考えにくい。政府は今般の国民投票を国家の団結を示したと称えつつ、6日と7日を祝日とした。

(研究主幹 高尾 賢一郎)

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