中東かわら版

№94 UAE:スーダンでの港建設に係る契約が取り消し

 2024年11月3日、スーダンのイブラーヒーム財務相は、UAEとの港建設に係る契約(契約額約40億ドル)を破棄したと発表した。同契約は、2022年12月にUAEのアブダビ港湾グループ(AD Ports Group)とスーダン人実業家が経営するインビクタス・インベストメント社が締結した60億ドルの投資パッケージの一部であり、スーダン紅海沿岸にアブー・アマーマ港(ポートスーダン北方200km)及び経済特区を建設する計画である。

 イブラーヒーム財務相は取り消し理由について、2023年4月から続くスーダン内戦において、UAEがスーダン政府/軍と対立する、準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」を支援しているからだと説明した。

 

評価

 今般スーダン政府側に取り消された港の建設契約は、UAEの紅海進出にとって重要なプロジェクトである。UAEはアフリカ諸国での経済利権の拡大や食料の安定調達などを目的に、これまでエリトリア南部やソマリア北部といった紅海沿岸に複数の拠点を構築してきた。スーダンでも、小麦やトウモロコシ、家畜飼料などの輸入に向け、2022年6月にスーダン北部の町アブー・ハマドで大規模農業プロジェクトを始動させ、農地とアブー・アマーマ港を結ぶ予定であった。しかし港の建設契約の破棄に伴い、農業事業も頓挫する恐れが出てきた。

 UAEはスーダン内戦への関与を否定する一方、スーダン政府/軍はUAEの対RSF支援を警戒している。過去、RSFがUAEの要請に応じ、同組織母体のアラブ人系民兵組織「ジャンジャウィード」をリビア紛争やイエメン紛争に派遣したことが疑われるなど、UAE・RSF間の結びつきは強い。こうした中、RSFがスーダン西部や首都ハルツーム南方のジャジーラ州で勢力を拡大させた戦況を受け、スーダン政府/軍はRSF支援国とされるUAEの経済利権を標的とすることで、UAEがRSFに停戦を働きかけることを期待している可能性がある。

 スーダン政府/軍がポートスーダンなど紅海沿岸地域を掌握する状況が今後も続くとなれば、UAEは港建設事業の再開に向け、スーダン政府/軍との関係を立て直す必要があるだろう。

(主任研究員 高橋 雅英)

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