中東かわら版

№74 シリア:ムハンマド・ジャラーリー内閣の組閣

 

 2024年9月23日、アサド大統領は、ムハンマド・ジャラーリーを首班とする内閣の閣僚を任命した。翌24日には閣僚の宣誓式が行われ、アサド大統領は宣誓式後の閣議を主宰してこの困難な状況で政府の活動を円滑化するためには、夢物語の政府ではなく現実の政府となるべきだと訓示した。閣僚名簿は以下の通り。なお、アサド大統領は組閣と同時に2020年11月から外相を務めてきたファイサル・ミクダードを外交政策・広報を担当する副大統領に任命した。

氏名

役職

特記事項

ムハンマド・ガージー・ジャラーリー

首相

元通信・技術相

ムハンマド・アブドゥルサッタール・サイード

ワクフ相

 

サラーム・サファーフ

行政開発相

女性、バアス党中央委員会

ムハンマド・ハリール

工業相

経済・対外貿易相から異動

ムハンマド・ハーリド・ラフムーン

内相

 

ムハンマド・ラーミー・ラドワーン・マルティーニー

観光相

 

アリー・マフムード・アッバース

国防相

バアス党中央指導部

イヤード・ムハンマド・ハティーブ

通信・技術相

 

アフマド・サイード

司法相

 

ズハイル・ハジーム

運輸相

 

ディヤーラー・バラカート

文化相

女性、国務相から異動

フィラース・カッドゥール

石油相

 

ルアイ・イマードッディーン・ムンジド

国内商業・消費者保護相

社会・労働相から異動

アフマド・ブースタフジー

国務相

元人民議会議員、統一共産党政治局員

ムハンマド・アーミル・マールディーニー

教育相

 

ルアイ・ハリータ

地方自治・環境相

ダラア県知事から異動

ムウタッズ・タイシール・カッターン

水資源相

ダイル・ザウル県知事から異動

バッサーム・サッバーグ

外相

副外相から異動

バッサーム・ハサン

高等教育・研究相

新任

リヤード・アブドッルウフ

財務相

新任

アフマド・ドゥマイリーヤ

保健相

新任

シンジャール・タアマ

電力相

新任

ファーイズ・ミクダード

農業相

新任

ムハンマド・ラビーウ・カルアジー

経済・対外貿易相

新任、元人民議会議員(バアス党)

アフマド・ラマダーン・ハドラ

国務相

新任、人民議会議員(アラブ民主連合党)

サマル・シバーイー

社会・労働相

新任、女性

ハムザ・アリー

公共事業・住宅相

新任

ジヤード・グスン

情報相

新任、バアス党、元『ティシュリーン紙』編集長

評価

  今般の組閣は人民議会議員選挙(7月)後に行われる慣例通りの組閣であり、首相と外相が交代したものの、政策や人事の方針に大きな変更があったわけではない。新任の財務相、保健相、電力相、農業相は、各々所管する省の次官からの昇格である。なお、人民議会議員選挙に先立つ5月には最大与党のバアス党の中央委員会・中央指導部が改選された。これは、バアス党の指導部改選→人民議会議員選挙→組閣という政治日程の中で、業績や有権者からの評判が芳しくない党幹部・議員を(大統領や首相による上からの解任や排除ではなく)バアス党内の選挙を通じて要職から外し、新たな人材を選出するというアサド大統領の志向を反映したものとも考えられている。この志向は、2000年に就任して以来同大統領が持ち続けているものではある。また、一連の人事の傾向は、シリア紛争(2011年~)、震災(2023年)、現在の地域での紛争、欧米諸国による封鎖や経済制裁に代表される、シリア人民の生活水準向上を妨げる要因を解消するめどが立たなくとも復旧・復興を進めなくてはならない中、政府・人民議会・与党の状況認識を有権者・人民の生活感と近づける試みともいえるだろう。

(協力研究員 髙岡 豊)

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