中東かわら版

№71 チュニジア:マドゥーリー新内閣の発足

 2024年8月25日、サイード大統領は、マドゥーリー首相を首班とする新内閣を任命した。マドゥーリー首相は同月7日のハシャーニー首相の解任に伴い、首相職に就任した。マドゥーリー内閣の全25閣僚のうち、20人が新任となった。閣僚リストは、以下のとおりである。

 

表 マドゥーリー内閣の閣僚リスト(※新任は太字)

首相

カマール・マドゥーリー

前社会問題相

法相

ライラ・ジファール

2021/10~

国防相

ハーリド・スヒーリー

元駐ヨルダン大使

内相

ハーリド・ヌーリー

2024/5~

外務・移民・在外チュニジア人相

ムハンマド・アリー・ナフティー

元駐韓国大使

財務相

シハーム・ブーグディーリー・ナムシーヤ

2021/10~

保健相

ムハンマド・ファルジャーニー

軍医官、前大統領補佐官

経済・企画相

サミール・アブドゥルハフィーズ

前チュニス・エルマナール大学経済・経営学部(FSEGT)教授

社会問題相

イッサーム・ラフマル

破毀院判事

産業・鉱業・エネルギー相

ファーティマ・タービト・ハルム・シーブーブ

2024/1~

貿易・輸出発展相

サミール・アビード

前輸出促進センター(CEPEX)副所長

農業・水資源・水産相

アズッディーン・ベン・シャイフ

前北部運河・水路開発協会(SECADENORD)会長

教育相

ヌールッディーン・ヌーリー

前マフディーヤ地域教育委員

高等教育・科学研究相

マンディル・ベライド

前高等教育・科学研究省計画・監視・調整・質保証部長

青年・スポーツ相

サーディク・ムーラーリー

元国立スポーツ医学センター所長

通信技術相

スフィヤーン・ハミーシー

前スマート・チュニジア・テクノパーク社CEO

運輸相

ラシード・アームリー

前チュニス国立工学学校(ENIT)機械工学部教授

設備・住宅相

サーラ・ザアフラーニー・ザンザリー

2021/10~

国有資産・不動産問題相

ワジュディー・ハディーリー

破毀院判事

環境相

ハビーブ・アビード

前農業省森林局長

観光相

スフィヤーン・タカイヤ

前貿易相顧問

宗教問題相

アフマド・ブーハーリー

前ザイトゥーナ大学准教授

家族・女性・子供・高齢者相

アスマー・ジャーバリー

前雇用・職業訓練省職業訓練担当官

文化問題相

アミーナ・スラールフィー

指揮者

雇用・職業訓練相

ラヤード・シャウド

前雇用・職業訓練相付き地域企業担当政務長官

(出所)国営通信「TAP」など各種情報をもとに筆者作成。

 

評価

 サイード大統領が2021年7月に権力を奪取して以降、首相に任命された者はマドゥーリー首相で3人目である。サイード大統領は1人目のナジュラー・ブーデン元首相を2023年8月に、2人目のハシャーニー前首相を2024年8月に、理由を明確にせずに解任してきた。そして今般、10月6日にサイード大統領も立候補する大統領選挙を控える状況下、閣僚の大半が交代する大規模な組閣が実行された。

 外相や国防相といった主要閣僚が入れ替わる一方、留任した閣僚の中には、サイード大統領の政権運営に大きく貢献してきた者が見られる。たとえば、反大統領勢力への締め付け強化に向け司法当局を動かすジファール法相や、政府財源の補填と2025年予算策定を担当するシハーム・ブーグディーリー財務相である。その他、反政府デモの取り締まりを指揮するヌーリー内相とベン・サーディク内相付き国家安全保障担当政務長官も引き続き治安維持業務を担う。

 サイード大統領はこれまで各閣僚の政権への貢献度を見極めながら、パフォーマンス不足であると感じた場合に躊躇なく更迭することで、政治指導者としての統治力を示そうとしてきた。しかし、同大統領の強権的な統治手法による度重なる閣僚交代が、社会経済課題への対応の遅れにつながり、問題解決の妨げになっている可能性もあるだろう。

 

【参考】

「チュニジア:大統領選挙を10月6日に実施予定と発表」『中東かわら版』No.44。

(主任研究員 高橋 雅英)

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