中東かわら版

№70 アルジェリア:大統領選挙の最終結果発表、タブーン大統領の再選

 2024年9月14日、アルジェリア憲法裁判所は、9月7日に実施された大統領選挙の最終結果を発表し、2期目を目指すタブーン現大統領が84.3%の得票で再選を果たした。タブーン大統領は2019年12月、20年間に及ぶブーテフリカ政権が崩壊して政治的混乱が続く状況下で、大統領に就任した。今回の大統領選挙では、イスラーム主義政党・平和社会運動(MSP)のアブドッラーニー・ハッサーニー・シャリーフ党首や、カビール地方を支持基盤とする社会主義勢力戦線(FFS)のユースフ・アウシーシュ党首も立候補した。大統領選挙の結果は、以下の通りである。

 

(1)投票総数や投票率など

有権者登録数

24,351,551

投票総数

11,226,065

無効票数

1,764,637

投票率

46.1%

 

(2)各候補者の得票

候補者名(所属)

得票数

得票率

アブドゥルマジード・タブーン(無所属)

7,976,291

84.3%

アブドッラーニー・ハッサーニー・シャリーフ(MSP党首)

904,642

9.6%

ユースフ・アウシーシュ(FFS党首)

580,495

6.1%

(出所)国営通信「APS」をもとに筆者作成。

 

評価

 今次大統領選挙では、現職のタブーン大統領に対する有力な対抗馬が出なかったことから、選挙前から同大統領の再選は確実視されていた。タブーン大統領は無所属候補として出馬したものの、組織的動員力を持つ連立与党に加え、全国ムジャーヒディーン(戦争功労者)組織(ONM)や全国退役将校団体などからも支持を受け、選挙戦を有利に展開した。ただ、最終的な投票率(46.1%)はこれまでの選挙と同様、半分に届かなかった。低投票率の背景には、現状維持を望む国民も存在する反面、政治参加しても民意が反映されないという政治的閉塞感の広がりがある。

 今回の再選によりタブーン政権は2期目に突入するが、現体制にとっての不安要素もある。まず、今年79歳を迎える高齢のタブーン大統領が1期5年の任務を全うできるのかという健康面への懸念がある。また、アルジェリアの体制維持に直結する資源収入が減少に転じた場合、タブーン政権が国民の不満の高まりを抑え込むための財政出動を実行できなくなるだろう。さらに、周辺地域での情勢緊迫化がアルジェリアの治安状況に悪影響を及ぼす恐れもある。そして、現時点で表立っていない軍部内での権力闘争がブーテフリカ政権期のように活発化するか否かも、タブーン大統領の政権維持に大きく関係するだろう。

(主任研究員 高橋 雅英)

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