中東かわら版

№68 UAE:バラカ原子力発電所4号機の商業運転が開始、原発のフル稼働へ

 2024年9月5日、エミレーツ原子力公社(ENEC)は、バラカ原子力発電所の4号機が商業運転を開始したことを発表した。これにより、韓国製のバラカ原発(設備容量140万キロワットの原子炉4基)のフル稼働が可能となり、同原発の発電量は総発電量の25%相当の40テラワット時(TWh)に達する見通しである。

 ENECのハルドゥーン・ムバーラク取締役会会長(執行関係庁(EAA)長官及び政府系投資会社「ムバダラ」CEO兼任)は、4号機が商業運転を開始したことで、2008年にUAEの指導部が発表した、エネルギー安定供給に向けて民生用原子力を開発するというビジョンが実現された点を強調した。

 

評価

 UAEが原発の導入を決定した2008年当時、将来の電力不足に対する懸念があった。実際、その後の人口増加や経済規模の拡大、海水淡水化施設のフル稼働状況などにより、電力発電量は2008年から2023年の期間、80TWhから165TWhへと倍増し、電力需要の増加傾向は今後も続くと予想される。この点を踏まえると、原発建設費に約250億ドルが費やされたものの、UAEが電力の安定供給を継続する上で、バラカ原発の存在は不可欠となる。

 バラカ原発の建設・操業プロジェクトが完了したことを受け、UAEが新たな原発の導入に向けて動き出すかが注目される。『ロイター通信』が今年4月及び7月に、UAEが電力需要の増加に対応するため、新たな原発の建設を検討していると報じた。UAEの原発の発電コストはガス火力発電より割高であるが、UAEは原子力由来のクリーンエネルギーを活用することで、産業部門全体の低炭素化を図ろうとしている。このため、発電比率に占めるガス火力の割合を更に引き下げるため、昼夜問わず大規模発電が可能である、原発を新設する可能性は高いだろう。

 

【参考】

「UAE:新たな原子力発電所の建設に関する報道」『中東かわら版』No.47。

「UAEのクリーンエネルギー政策と天然ガス産業の動向」『中東分析レポート』T23-13。※会員限定。

(主任研究員 高橋 雅英)

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