中東かわら版

№55 オマーン:LNG増産計画を発表

 2024年7月27日、オマーン政府は南シャルキーヤ県カルハートで、年間380万トンの液化天然ガス(LNG)生産能力を持つ液化設備を追加配置する計画を発表した。同計画では、2029年までに液化設備が新設され、完成すれば、オマーンの年間液化能力は1520万トンまで増加する見通しである。オマーン政府は現在、LNG増産計画の最終投資決定(FID)に向けて、基本設計調査(FEED)を進めている。

 

評価

 オマーンはこの10年間でLNG輸出量を770万トンから1143万トンに増やし、ガス収入を着実に増加させてきた。再エネ移行期の橋渡し燃料として、天然ガスの利用継続が見込まれることを受け、オマーンは更なるLNG輸出に向け、LNG増産計画に乗り出した。カタルやUAEでもLNG増産プロジェクトが始動する中、オマーンはホルムズ海峡のインド洋側に位置する地理的優位性を活かすことで、増産分のLNG売買契約を勝ち取っていくと予想される。

 オマーンは今後、インド太平洋地域における船舶向け燃料用LNGの供給拠点となることを目指している。オマーン石油会社「QQ」と仏企業「トタルエナジーズ」は今年4月、FIDを経て合弁会社「マルサLNG」を設立し、船舶用燃料としてLNGを供給するバンカリング事業に着手した。同プロジェクトでは北バーティナ県のスハール港に、年間100万トンの生産能力を擁すLNG生産施設が2028年までに建設され、LNG燃料船への供給体制が構築される予定である。また船舶用燃料としては未販売となったLNGは両社が引き取り、海外市場に販売される見通しである。国際海事機関(IMO)による船舶燃料への環境規制の導入により、船舶用燃料としてのLNG需要が徐々に高まる可能性があることを踏まえると、オマーンはバンカリング事業を通じて、LNG供給国としての地位を向上させることができるだろう。

 

【参考】

「オマーン:日本企業とのLNG長期契約」『中東かわら版』No.11。

(主任研究員 高橋 雅英)

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