中東かわら版

№4 カタル:新造LNG船の運航契約、韓国企業による造船受注

 2024年3月31日、カタル国営企業「カタルエナジー」は液化天然ガス(LNG)船の建造計画の一環として、19隻の新造LNG船の運航に関する長期定期傭船契約を4社と締結した。同契約では、中国企業「CMES」及び「Shandong Marine Energy」がそれぞれ6隻、マレーシア企業「MISC Berhad」が3隻のLNG船を運航し、これら15隻は韓国企業「サムスン重工業」によって建造される。また残りの4隻は、川崎汽船と韓国企業「現代グロービス」の合弁会社が運航し、韓国企業「ハンファ・オーシャン」が建造する。

 

評価

 産ガス国カタルにとって、LNG輸出は財政基盤を支える最大の外貨獲得源である。カタルはLNG生産能力の拡大計画を進めており、年間生産能力を現在の7700万トンから2030年までに1億4200万トンに引き上げる予定だ。このため、LNG輸出先を確保しながら、将来的なガス輸出の増加を見据えて、運搬に不可欠なLNG船の調達も準備している。

 こうした中、韓国企業による造船契約の受注が際立っている。韓国はカタルに対し、LNG船の生産能力や技術力を積極的にアピールすることで、2020年に大型受注に向けたスロット契約(造船所で船舶が建造される場所であるドックを予め確保しておく事前契約)を獲得した。同契約により、韓国勢が現在、カタルエナジーに関連するLNG船案件で優先的に造船契約を得られている。最近では、2023年9月に現代重工業が39億ドルの契約(17隻建造)を、今年2月にはサムスン重工業が34億ドルの契約(15隻建造)をカタルエナジーと締結した。このように、韓国はカタルのLNG輸出戦略を支える重要なパートナー国となっている。

 この先、韓国はカタルとのエネルギー分野の協力を通じて二国間関係を深めながら、カタルへの武器輸出を試みていくと予想される。ハンファ・オーシャンが属するハンファ・グループは防衛装備品事業も手掛けており、同グループ企業が開発した韓国製防空システム「天弓2」は、サウジ及びUAEへの輸出が決まっている。カタルは世界有数の武器輸入国であり、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、2019年~2023年の国別武器輸入額で、第3位(世界輸入総額の7.6%)であった。この点から、韓国は成長産業と捉える武器輸出産業を更に発展させるため、カタルからの韓国製武器購入に期待を寄せていると考えられる。

 

【参考】

「GCC:韓国・国防相のUAE、サウジアラビア、カタル訪問」『中東かわら版』2023年度No.172。

「GCC:ユン韓国大統領のサウジアラビア、カタル訪問」『中東かわら版』2023年度No.113。

 

(主任研究員 高橋 雅英)

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