中東かわら版

№174 アフガニスタン:国連主催会合がターリバーン不在で終幕

 2024年2月18~19日、カタルの首都ドーハで、国連のグテーレス事務総長主催の国際会合が開催された。今次会合は昨年5月に行われた同フォーマット会合の2回目に当たり、関係諸国のアフガニスタン担当特使級が参加した。グテーレス事務総長は記者会見で、今次会合では、テロ対策、多様な民族・政治集団を包摂した体制の成立、人権の保障、麻薬対策等について協議したと明らかにした。他方、同事務総長は、アフガニスタンは未だ国際的に承認されておらず、また国際機構とグローバル経済の中に統合されていない点が大きな問題と述べた。

 今次会合に当たっては、国連はターリバーンを招待したが、ターリバーンは参加を見送った。17日付声明で、ターリバーンは、イスラーム首長国(注:ターリバーン)がアフガニスタンの唯一の代表者として認められるのであれば参加するとの条件を示したが、条件が満たされなかったので有益にはならないと判断したと述べた。グテーレス事務総長は会見においてこの点にも言及し、ターリバーンは国連にアフガニスタンの他の代表者と話をしないことや、それ以上の(承認に等しい)条件を求めてきたが、これらの要求は受け入れられないと応答した。

 

評価

 今次会合に至る過程では、国連とターリバーンの互いに求めていることの違いが浮き彫りとなった。国連側は昨年5月に第1回会合を開き、その後シニルリオール特別調整官(トルコ人)率いるチームが現地調査を経て独立評価報告書を提出(11月)するなど、ターリバーンに対する戦略的且つ一貫した関与を図ってきた。同報告書は、諸外国とターリバーンの間のコミュニケーションが不充分だとして、国連が任命するアフガニスタン担当特使ポストの創設を提案している。一方のターリバーンは、復権後、全土で治安を改善し、力強い独立したアフガニスタンを取り戻したと自負しており、自派が同国の代表と考えているものとみられる。このため、ターリバーンは、お目付け役ともいえる特使ポストの創設に反対している。実際のところ、今次会合の場で、ターリバーン代表団がアフガニスタン市民社会代表団及び欧米代表団と同席した場合、ターリバーンが人権問題などで「吊し上げ」を喰らう状況になることは想像に難くない。自派の原則的立場及び実利に照らしても、指導部内で参加は望ましくないと判断されたのだろう。中国を始めターリバーンを事実上承認する国も一部ある中、ターリバーンとしては、人権の遵守を求める欧米に譲歩するよりも、むしろ内政に立ち入らない中国、ロシア、イラン等の国々と関係を強化してゆく方が得策と考えても不思議ではない。

 

【参考】

「アフガニスタン:国連のグテーレス事務総長主催会合がドーハで開催」『中東かわら版』No.17。

(研究主幹 青木 健太)

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