中東かわら版

№173 イラン:アブドゥルラヒヤーン外相がレバノン、シリア、カタルを歴訪

 2024年2月9~13日にかけて、アブドゥルラヒヤーン外相はレバノン、シリア、カタルを歴訪し、各国要人及びパレスチナ抵抗勢力の指導者らと会談した。同外相はレバノンで同国のミーカーティー首相、ハビーブ外相、ベッリ国会議長らと個別に会談した他、シリアでアサド大統領を表敬し、最終目的地となったカタルでは同国のタミーム首長、ムハンマド・ビン・アブドゥルラフマーン首相兼外相と会談した。これらの協議において、二国間関係、ガザ情勢、とりわけガザ戦争の政治的解決に向けた方途等が協議された。

 また、アブドゥルラヒヤーン外相はこれと並行して、今次歴訪において、パレスチナ抵抗勢力の指導者らとも会談を重ねた。イラン外務省は、今次歴訪において、ヒズブッラーのナスルッラー書記長、パレスチナ・イスラーム聖戦のナッハーラ書記長、ハマース政治部門のハムダーン幹部、パレスチナ解放人民戦線のマズハル副書記(以上、於レバノン)、シリア在住パレスチナ抵抗勢力幹部ら(於シリア)、及び、ハマースのハニーヤ政治局長(於カタル)らとの協議が行われたと発表した。これら会談では、多大な人的・物的損害にもかかわらず、パレスチナ人民の勝利は日に日に近づいているといった話し合いが行われた模様である。

 

評価

 今次歴訪の目的の一つは、ガザ危機の政治的解決に向けた下地作りだったと考えられる。報道によると、13日、エジプト、イスラエル、米国、カタル4カ国の政府・情報機関高官がカイロで一堂に会し、人質解放や休戦について協議した。アブドゥルラヒヤーン外相はその前日に、同4カ国協議に参加したカタル首相兼外相と会談したことになる。この場において、イスラエルによるガザ攻撃の即時停止や、米国による対イスラエル支援の停止等、イラン側の要望事項が伝えられた可能性はあろう。イランは、カタル等の第三国を仲介して、米国及びイスラエルにメッセージを送っているものと考えられる。

 もう一つ注目される点は、「抵抗の枢軸」と呼ばれる親イラン武装勢力の攻勢が域内で激化するなか、イラン外相がレバノン、シリア、カタルを訪れ、これら抵抗勢力の指導者らとの協議を通じて密接な関係をアピールしたことである。欧米諸国がハマースのテロ行為を非難する中、イランはハマースやパレスチナ抵抗勢力を支持する立場を一貫して堅持している。このようなイランの立場は、他のイスラーム諸国とも一線を画す独自路線といえよう。洋上を含む中東域内では、「抵抗の枢軸」諸派による米国・イスラエル権益への攻撃が続いている。実態として、「抵抗の枢軸」は抵抗を合言葉にした非国家主体同士のゆるやかなネットワークに過ぎないのかもしれないが、イランの巧みな見せ方によって米国やイスラエルに脅威を与える一つの巨大な組織かのような不気味な存在感を放っている。

(研究主幹 青木 健太)

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