中東かわら版

№172 GCC:韓国・国防相のUAE、サウジアラビア、カタル訪問

 韓国の申源湜(シン・ウォンシク)国防相は2024年2月1~7日、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、カタルの湾岸3カ国を訪問した。最初の訪問先のUAEで、シン国防相はムハンマド・マズルーイー国防担当国務相と会談し、両国間の特別戦略的パートナーシップ関係を強化していく点を確認した。また、アブダビに駐留する韓国軍部隊「Akh」(※アラビア語で「兄弟」の意味)を激励のために訪問した。

 次の訪問先のサウジでは、シン国防相はリヤドで開催された世界防衛展示会(WDS)を視察した他、ハーリド・ビン・サルマーン国防相と会談し、防衛協力の拡大に向けた覚書の調印式に立ち会った。なお、韓国国防省は国防相のサウジ訪問に合わせ、韓国製防空システム「天弓2」10基のサウジ向け輸出契約(32億ドル相当)を昨年11月に締結していたことを発表した。

 最後の訪問先のカタルでは、シン国防相はタミーム首長と会談し、二国間関係を強化していく点を確認した。また、アティーヤ副首相兼国防担当国務相との会談では、両国防省間の人的交流や合同軍事訓練の拡大を中心に、防衛協力を促進していく点で合意した。

 

評価

 この数年、韓国は湾岸諸国との関係を積極的に強化しており、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が2023年1月にUAEを、同年10月にサウジ及びカタルを国賓訪問した。今般、シン国防相の湾岸歴訪からは、韓国が湾岸諸国との結びつきをエネルギー・経済分野から、軍事分野に拡大させていく意図が明確に見られる。弾道ミサイル迎撃システムである「天弓2」のサウジへの輸出は2022年のUAEに続く2例目となり、韓国製兵器が湾岸諸国から評価されている。韓国の防衛産業は、自国の安全保障のためだけでなく、経済を支える国家戦略産業に位置付けられるため、韓国はこの先も湾岸武器市場への参入を図っていくだろう。

 こうした韓国の軍事面での湾岸関与は、経済関係の更なる発展にもつながると予想される。韓国はアビダビでの軍駐留やホルムズ海峡への独自派兵などを通じて、湾岸地域で一定程度の軍事的プレゼンスを築くことで、湾岸各国に安全保障分野での協力パートナー国になり得ることを示してきた。そして防衛協力を積み重ね、構築した湾岸諸国との信頼関係は、韓国の国家主導型の経済活動を下支えし、今後も韓国企業のビジネス案件受注に貢献していくだろう。

 

【参考】

「GCC:ユン韓国大統領のサウジアラビア、カタル訪問」『中東かわら版』No.113。

高橋雅英「韓国の中東政策――経済・エネルギー関係と軍事的関与」『中東研究』第548号、2023年9月。

(主任研究員 高橋 雅英)

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