№145 エジプト:大統領選挙でシーシー大統領が再選、2030年まで政権維持へ
2023年12月10~12日にかけて、大統領選挙が行われた(在外投票は12月1~3日)。現職のシーシー大統領は1期目(2014~2018年)に続き、2期目(2018~2024年)を務めているが、2019年の改憲により、任期を4年から6年に延長し、3期目の出馬もできるようにした。
国家選挙機構が発表した結果によれば、シーシー大統領の得票率は約90%を記録し、他候補者に大差をつけた。再選により、シーシー大統領は最長2030年まで政権を維持できる見通しである。大統領選挙の結果は、以下の通りである。
(1)投票総数や投票率など
有権者登録数 |
67,032,438 |
投票総数 |
44,777,668 |
無効票 |
489,307 |
投票率 |
66.8 |
(2)各候補者の得票
候補者名(所属) |
投票数 |
得票率 |
アブドゥルファッターフ・シーシー(現職) |
39,702,451 |
89.6% |
ハージム・ウマル(共和人民党・党首) |
1,986,352 |
4.5% |
ファリード・ザフラーン(社会民主党・党首) |
1,776,952 |
4.0% |
アブドッサナド・ヤマーマ(新ワフド党・党首) |
822,606 |
1.9% |
(出所)国家選挙機構より筆者作成。
評価
今次大統領選挙は、投票率が前回(約41%)より高かったが、シーシー大統領に対抗する有力な候補者が現れず、事実上の大統領への信任投票となった。このため、選挙戦という意味では、国民の間で盛り上がりが欠けていた。
再選により、シーシー大統領は2030年まで政権を担えることとなったが、経済・外交面での課題に直面している。エジプト経済は高インフレや外貨不足に苦しみ、周辺地域ではスーダン内戦やガザ情勢が深刻化している。こうした状況下、シーシー大統領が経済を立て直し、エジプトを取り巻く不安定な地域情勢を安定化できるかが、長期政権の維持にとっての重要な要素となるだろう。
(主任研究員 高橋 雅英)
◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/