中東かわら版

№144 UAE:COP28の閉幕、「化石燃料からの脱却」で最終合意

 2023年12月13日、UAEのドバイで開催されていた第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)が閉幕した。成果文書の最終合意をめぐる締結国間の協議が延長したことで、当初予定より1日遅れで終了した。採択された成果文書の概要は、以下の通りである。

  • グローバル・ストックテイク(2015年パリ協定に基づいて各国が設定した温室効果ガスの排出・削減目標の進捗状況を科学的に評価する仕組み)の初採択。
  • 2030年までに世界全体の再生可能エネルギーの発電設備容量を3倍に拡大し、エネルギー効率の改善率を世界平均で2倍にすること。
  • 排出削減未対策の石炭火力の段階的削減に向けた努力を加速すること。
  • 科学的知見に基づき、2050年までにネット・ゼロを達成するため、公正で秩序ある、公平な方法で、エネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却を今後10年間で進めること。
  • 自然エネルギー、原子力、炭素の回収・利用・貯蔵(CCUS)などの削減・除去技術、低炭素水素製造といった、ゼロエミッション・低排出技術への支援を促進すること。
  • 気候変動の被害を受けた途上国を支援する「損失と損害」基金の運用開始。

 

評価

 COP28で議長国を務めたUAEは、成果文書の最終合意の取り付けに向け、加盟国間の意見調整を行った。採択された成果文書には、再エネの拡大、原子力の役割、CCUSの活用が明記された。UAEは他の中東諸国に先駆けて、これらの脱炭素政策に取り組んできた実績があり、今次COPを経て、国内で太陽光発電所を新設するとともに、国外の太陽光・風力・水力発電プロジェクトに積極的に投資していくと予想される。

 化石燃料の扱いについては、従来通り、主に欧米諸国と小島嶼国連合が化石燃料の「段階的廃止」を主張する一方、石油輸出国機構(OPEC)を中心とする産油国が、いかなる規制にも反対した。OPEC側は、化石燃料の消費・生産を抑えるのではなく、排出量抑制に重点を置くべきだと主張した。最終的には、OPEC加盟国でもあるUAEの交渉努力により、「化石燃料からの脱却」という文言に修正することで、産油国側からの同意が得られた。当初の段階的廃止からトーンダウンしたものの、石油・天然ガスも含めた化石燃料全般の扱いに言及した初の合意となった。この点から、産油国UAEが議長国として、石油消費国と資源産出国間の仲介役を果たしたからこそ、実現した成果文書であると言える。

 

【参考】

「UAE:COP28の開幕、化石燃料の扱いへの注目」『中東かわら版』No.138。

(主任研究員 高橋 雅英)

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