中東かわら版

№142 シリア:水資源相、地方自治・環境相の交代

 2023年12月13日、アサド大統領は2023年大統領令313号を発出し、以下の閣僚人事を行った。

氏名

役職

特記事項

フサイン・マフルーフ

水資源相

地方自治・環境相から転任。タマーム・ラアドと交代。

ラミヤー・シュクール

地方自治・環境相

女性。駐フランス大使、ユネスコ大使などを歴任。2011年6月に、抗議行動への弾圧に反対した駐フランス大使を辞任したとの誤報が流布した。

 

 なお、アサド大統領は同じ日に2023年大統領法令38号を発出し、従来の大統領府担当国務相を廃止し、大統領官房を設置した。現時点では大統領官房長官の人事についての発表や法律はないが、これまではマンスール・アッザームが大統領府担当国務相を務めている。  

評価

 今般の人事は、2020年6月から続くフサイン・アルヌース首相の内閣の改造人事で、干ばつや水資源の確保を担当する水資源相、国際的援助の窓口ともなる地方自治・環境相が交代した。シリアの閣僚人事は、海外留学や国際機関勤務経験がある実務家を起用する志向がある一方で、出身地や社会的背景の均衡を図る人事が行われている。今般の人事も、マフルーフ水資源相(ラタキア県出身)がラアド前水資源相(ホムス県出身)と交代した点、父親も駐フランス大使を務めたことがあり、国際機関での勤務経験もあるシュクール地方自治・環境相の起用、アッザーム大統領府担当国務相(スワイダ県出身、2009年4月から同職)の処遇にもかかわる大統領官房の設置といった、特徴を挙げることができる。

 閣僚や国会に相当する人民議会議員の内訳を分析すると、シリア紛争を経てもシリアの政府が国内の様々な地域や社会集団から満遍なく代表を出そうとしていることには変化はない。その結果、政府から離反した集団や弱体化して人材輩出能力が低下した集団がある一方で、上記の機関への参加が拡大した集団もある。シリア閣僚人事や人民議会議員の内訳には、国内の諸集団の盛衰やそれらと政府との関係を判断する際の指標としての意義がある点を踏まえた観察が必要である。

(協力研究員 髙岡 豊)

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