中東かわら版

№138 UAE:COP28の開幕、化石燃料の扱いへの注目

 2023年11月30日、UAEのドバイで第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)が開幕し、12月12日まで加盟国間で気候変動対策に関する協議が行われる。中東諸国によるCOP開催は、モロッコのマラケシュ(2001年及び2016年)、カタルのドーハ(2012年)、エジプトのシャルム・シェイフ(2022年)に続き、今回が5回目である。COP28の注目点と執筆時点での協議状況は、下表の通りである。

 

図表 COP28の注目点と協議状況

途上国の気象災害支援

気候変動の被害を受けた途上国を支援する「損失と損害」基金の設立で合意。各国が運用金の拠出を表明。

化石燃料の扱い

石炭や石油、天然ガスの利用について、排出削減対策による継続・大幅削減・段階的廃止・禁止などを検討。

再生可能エネルギー

再生可能エネルギーの発電設備容量を、2030年までに現在比の3倍に拡大する誓約に、118カ国が賛同。

原子力エネルギー

原子力エネルギーの発電設備容量を、2050年までに現在比の3倍に拡大する誓約に、22カ国が賛同。

温暖化ガス削減目標

2015年パリ協定で各国が定めた排出削減の進捗状況を確認。メタンガス排出量の削減目標を検討。

(出所)Reutersや米エネルギー省(DOE)などの情報をもとに筆者作成。

 

 COP28に際し、世界各国の首脳クラスがUAEを訪れている。イスラエルのガザ軍事作戦が国際社会から批判を浴びる中、イスラエルのヘルツォグ大統領もCOP出席のためUAEを訪問し、ムハンマド大統領とガザ情勢について協議した。一方、トルコのエルドアン大統領や南アフリカのラマポーザ大統領はCOPの演説で、イスラエルのガザ攻撃を強く非難した。

 

評価

 UAEは議長国としてCOP28で加盟国間の意見調整を行いつつ、欧米諸国と連携して、再エネの拡大目標を最終合意に盛り込むことを目指している。また、「損害と損失」基金に1億ドルの拠出を表明した他、途上国向けの気候変動対策への支援目的とした300億ドル規模の基金「アルテラ(Alterra)」の設立を発表するなど、豊富な資金力を駆使して、気候変動対策での存在感を強めている。UAEはこれまで国内で太陽光発電の新設や、アラブ湾岸諸国初となる原発の導入を行い、中東地域で脱炭素政策を率先してきた国である。

 COP28での注目点は、化石燃料の扱いに関する議論が進展するかである。石炭について、2021年のCOP26で石炭火力の段階的削減に合意した一方、石油や天然ガスへの具体的な対応は先送りされた。ただ、G7やEUは化石燃料全般を段階的に廃止する方針を示している。COP28で採択される最終文書は法的拘束力がないものと予想されるが、UAEはCOP28で他産油国と協調して、欧米主導の過度な化石燃料規制に向けた動きを牽制していくと考えられる。同時に、石油生産プロセスでの脱炭素化をアピールして、化石燃料の利用と脱炭素政策が両立する点を強調し、生産継続への理解を求めていくだろう。

(主任研究員 高橋 雅英)

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