中東かわら版

№134 サウジアラビア:2030年万博のリヤド開催が決定

 2023年11月28日、パリで開催されたBIE(博覧会国際事務局)総会において、2030年の万国博覧会(2030年10月~2031年3月開催)をサウジアラビアの首都リヤドで開催することが決定した。リヤドは無記名による電子投票で119票を集め、29票の釜山、17票のローマに圧勝し、必要な3分の2以上の票を獲得した。2025年の大阪万博に次ぐ開催となり、中東では2021年のドバイに次ぐ2カ国目となる。これを受けてファイサル・ビン・ファルハーン外相は、100カ国が参加するための予算としてサウジが3億4800ドルを用意すると発言した。

 

評価

 サウジは2021年10月に2030年万博の誘致に立候補し(当初はウクライナとロシアも立候補していた)、以降は世界各国から支持を取り付けるべく外交活動に腐心してきた。今年に入ってサウジ側が報じただけでも、ウズベキスタン、コロンビア、サントメプリンシペ、ジンバブエ、セーシェル、ソマリア、トーゴ、パレスチナ自治政府、パラグアイ、ブルキナファソ、ブルンジ、ベラルーシ、モーリシャスなどのアジア・アフリカ諸国から支持を取り付けたとある。6月にはパリでの晩餐会でムハンマド皇太子がリヤド開催を強くアピールしており、欧米諸国からも一定の支持を取り付けたと考えられる。

 言うまでもなく、サウジ及びムハンマド皇太子にとって、2030年の万博開催は経済マスター・プランであるサウジ・ビジョン2030の集大成を祝うイベントの一つと見据えられてきた。2021年のドバイ万博、2022年のカタル・サッカーW杯のように、近隣諸国が国際イベントを招致した実績も、サウジにとっては強いモチベーションとなっただろう。類似の国際イベントとして、サウジは既に多くのスポーツ大会の誘致に立候補しており、この内2020年12月には2030年のアジア競技大会の主催が、2022年10月には2029年のアジア冬季競技大会の主催が、そして2023年2月には2027年のAFCアジアカップ(アジア諸国の代表によるサッカー大会)の主催が決定している。

残る立候補中のイベントは、2026年開催のAFC女子アジアカップ、そして2034年のサッカーW杯だ。中東においてもスポーツウォッシング(スポーツの政治利用)が普及している中、サウジとしては手綱を緩めることなく次なる国際的イベントの誘致にまい進するだろう。

 

【参考】

「サウジアラビア:2029年のアジア冬季競技大会の開催が決定」『中東かわら版』2022年度No.97。

(研究主幹 高尾 賢一郎)

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