中東かわら版

№118 エジプト:ガザ地区からの外国籍保有者及び重傷者の退避

 2023年11月1日、カタルはアメリカと協調して、エジプト・イスラエル・ハマース間でガザ地区からの限定的な退避を認める合意を仲介した。同合意により、エジプト・ガザ間のラファフ検問所から、外国籍保有者と重傷者の一部がエジプトへ退避することが可能となった。

 パレスチナ当局は1日午後、計335人の外国籍保有者を乗せたバス数台がラファフ検問所を通過してガザ地区からエジプトに退避したことを明らかにした。また、エジプト保健・人口省はパレスチナ人負傷者の受け入れ第1陣として、16人がラファフ検問所経由でエジプト・北シナイ県にある病院に搬送されたと発表した。

 

評価

 ラファフ検問所ではこれまでガザ地区への人道物資の搬入のみが認められてきたが、今般カタルの仲介により、外国籍保有者とパレスチナ人負傷者の一部がエジプト側に初めて退避できるようになった。シーシー大統領はパレスチナ人に十分な治療を受けさせるため、北シナイ県の全ての病院に対して万全の態勢を整えるよう指示を出している。

 エジプトが受け入れ姿勢に転じた背景には、エジプト国内で高まる親パレスチナ感情や諸外国との関係を考慮したことがあると考えられる。シーシー大統領は国民感情に寄り添うことで、ガザ情勢への関与に消極的な姿勢であるとの批判をかわすとともに、これまで多額の援助を受けてきた諸外国との関係維持を図ることが重要だと捉えている。

 一方、エジプトは重傷者以外のパレスチナ人のエジプトへの避難には同意していない。エジプトは、イスラエルが主張するパレスチナ人のシナイ半島への移住はパレスチナの大義に反するとして、一貫して認めていない。しかし、イスラエルの軍事作戦が進行し、ガザ地区でパレスチナ人の死傷者が更に増えるとなれば、エジプトは国内外からパレスチナ人受け入れへの圧力にさらされるだろう。

 

【参考】

「エジプト:ガザへの人道物資搬入に合意」『中東かわら版』No.106。

「エジプト:ガザ人道回廊への難色」『中東かわら版』No.101。

「パレスチナ:ガザ地区での「人道危機」回避の試み」『中東かわら版』No.100。

(主任研究員 高橋 雅英)

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