中東かわら版

№115 エジプト:シナイ半島の紅海沿いの町へのドローン攻撃

 2023年10月27日、シナイ半島のイスラエル国境付近の町ターバー(Taba)にある医療施設近くにドローン1機が墜落して爆破し、6人が負傷した。また同日、シナイ半島の紅海沿いの町ヌウェイバ(Nuweiba)の発電所付近にもドローン1機が落下した

 

図表 ターバー及びヌウェイバの場所

(出所)筆者作成

 

 エジプト軍報道官はドローン2機について、紅海の南方から北方に飛行し、エジプト領空に侵入したと述べた。またイスラエル外務省は、エジプトに飛来したドローンは、イエメンのアンサール・アッラー(通称フーシー派)からイスラエルに対して発射されたものであると発表した。

 

評価

 ガザ情勢の悪化を受け、フーシー派の武装活動が活発傾向にあり、同派は今月19日にもイスラエルに向けてミサイルやドローンを発射した。こうした経緯を踏まえると、今般エジプトに飛来したドローン2機もフーシー派から発射したものである可能性は高いと考えられる。

 現時点でフーシー派が本攻撃に反応を示していないため、エジプトを意図的に狙ったかどうかは確認できない。ただ、フーシー派は昨年12月、エジプト軍が紅海での連合海上部隊(CMF)の指揮権を米軍から引き継いだことを批判し、エジプトの動きを敵対的行動だと牽制していた。このため、エジプトに対するフーシー派による攻撃の脅威は高まっていたと言える。こうした状況下、ガザ情勢に連動して、フーシー派がイスラエルと国交を持ち、ガザ対応でアメリカと連携しているエジプトの立場を揺さぶるため、武装活動に着手した可能性も否定できない。

 この先も、ガザ情勢の悪化がエジプトの治安状況に深刻な影響を及ぼすだろう。イスラエルがガザ地上作戦を本格化させるにつれ、フーシー派もイスラエルへの敵意を強め、今回のようなドローン攻撃を積極的に行うと予想される。また22日には、イスラエルがガザ地区を砲撃した際に、同地区近くにあるエジプト軍の監視塔を誤爆し、エジプト軍兵士1人が負傷した。今後、ガザでの戦闘に関連してエジプト側に死者が出るような事態となれば、エジプト国内でイスラエルの行き過ぎた軍事行動に批判の声が高まり、エジプト・イスラエル外交関係も対立関係に転じる可能性があるだろう。

(主任研究員 高橋 雅英)

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