中東かわら版

№71 中東:BRICSへの関心と南アでの首脳会談への参加 #2

 2023年8月24日に第15回BRICS首脳会談が閉幕した。今次会談で最も注目を集めたのは、メンバー国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が、アルゼンチン、イラン、エジプト、エチオピア、サウジアラビア、UAEの6カ国に対してBRICS加盟を呼びかけたことである。6カ国の加盟申請に基づいてメンバー国が合議でこれを承認した上で、BRICSへの「招待」という形をとっている。今後、上記6カ国は具体的な検討に移り、問題なければ2024年1月のBRICS加盟が実現する。

 

評価

 BRICSへの招待を受けた6カ国は、いずれも早期の加盟が噂されていた国であり、今次会談で加盟への具体的な進展が見られたこと自体は驚くことではない。中でもエジプトとUAEに関しては、BRICSが共同出資する新開発銀行の株主という立場にあるため(出資比率は現メンバー国が18.98%ずつ、残りをエジプト、バングラデシュ、UAEが出資)、やはり加盟への招待は順当といったところだ。

 一方、6カ国の顔ぶれを見ると、内4カ国が中東である点が興味深い。特にサウジ・エジプトという新旧のアラブの盟主に、世界有数のヒト・モノ・カネのハブであるUAE(7月にはインドとの間で貿易でのインドルピー建て決済に合意)、そして中東ではエジプトに次ぐ人口を誇り、サウジとの国交回復合意を経て存在感を増すイランという、いわば中東の有力国を加えることで、BRICSが中東全域への影響力向上を目論んでいる様子がうかがえる。なおその観点からいえば、ルネサンスダム事業をめぐってエジプトと対立するエチオピアも招待したことは示唆的といえよう。

 G7と対立するロシアや米国と競合する中国からすれば、BRICSの影響範囲が広がることは望ましいことである。欧米諸国がロシアや中国の孤立化を目論む傍ら、BRICSはそれらを含む包摂的な国際社会の形成に取り組んでいる。6カ国が加盟すれば、すでにG7のそれを上回ったとされるBRICSのGDPはますます増大するはずだ。同時にサウジ・UAEのように、欧米と対立しているわけではない国々からすれば、BRICSに加わることは欧米諸国との今後の各種交渉における有力なカードともなりうる。

 

【参考】

「中東:BRICSへの関心と南アでの首脳会談への参加 #1」『中東かわら版』No.69。

(研究主幹 高尾 賢一郎)

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