中東かわら版

№67 リビア:トリポリで民兵間の武力衝突が発生

 2023年8月14~15日、首都トリポリで民兵間の武力衝突が起き、55人が死亡、146人が負傷したと報じられた。同衝突の背景には、トリポリの大部分を支配する主要民兵「第444旅団」のマフムード・ハムザ司令官が14日にトリポリのミティーガ空港で、競合関係にある民兵「特別抑止部隊(SDF/RADA)」に拘束されたことがある。15日夜にハムザ司令官の解放を受け、両民兵が停戦に合意し、情勢は鎮静化した。トリポリでの大規模衝突の発生は、2022年8月以来である。 

評価

 リビア情勢は2014年の紛争発生以後、国内勢力が東西に分裂しており、東部勢力が西部トリポリでの政権運営に向けトリポリ進攻を図る度に、大規模衝突が生じてきた。

 しかし今回の衝突は、トリポリを拠点とする民兵間の対立が引き金となった。現時点で特別抑止部隊がハムザ「第444旅団」司令官を拘束した理由は判明しておらず、リビア紛争の介入国(トルコやエジプト等)が今次衝突に関与したとの事実は確認されていない。一方、トリポリ拠点の国民統一政府(GNU)が両民兵の活動を完全に管理できていない点が明らかとなった。現在、トリポリで各国大使館が再開し、外国企業もリビア市場に復帰しつつある状況下、GNUの指揮下に置かれていないトリポリ民兵間の競合関係が治安上の不安要因であり、今後も民兵間の衝突が頻発する恐れがあるだろう。

 

【参考】

「リビア:トリポリでの大規模な武力衝突」『中東かわら版』2022年度No.79

「リビア:トリポリで東西政府の支持民兵が衝突」『中東かわら版』2022年度No.19

(主任研究員 高橋 雅英)

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