中東かわら版

№60 GCC:中央アジア諸国との関係強化の思惑

 2023年7月19日、サウジアラビアのジェッダでGCC・C5(中央アジア5カ国)サミットが開かれ、GCC諸国からムハンマド・サウジ皇太子(議長)、タミーム・カタル首長、ミシュアル・クウェイト皇太子、ムハンマド・ビン・ラーシドUAE副大統領、アスアド・ビン・ターリク・オマーン副首相、ナーシル・ビン・ハマド・バハレーン国家安全保障顧問が、C5からはウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの各大統領が出席した。

 サミットでは治安、エネルギー安全保障、食料安全保障、経済、投資、観光等の分野でのGCC・C5間での協力について確認された他、イスラモフォビアやムスリムに対する差別・暴力への対応、また内政不干渉や主権の尊重、マスタープランを通じた各国間の連携等について協議がなされた。これを経て、GCC・C5間で戦略的対話・協力のためのジョイントアクションプラン(2023~2027年)が承認された。この他、サウジが立候補している2030年の万博開催をC5各国が支持したことを受け、ムハンマド皇太子は謝意を表明した。

 

評価

 2018年に初めて開かれたGCC・C5経済フォーラム(於カザフスタン)以降、GCC・C5枠組みでの連携を求める向きが双方において強まっている。2020~2021年には教育、観光、また政治・経済・治安分野での協力にかかわるMoUが締結され、2022年には初となるGCC・C5の閣僚会合がリヤドで開かれた他、今次サミットで承認されたジョイントアクションプランのための準備会合がもたれた。

 個別に見れば、GCC各国は投資や宇宙開発(特にサウジ、UAE)等の分野で中央アジア諸国との関係強化を進めてきた。そうした関係強化が近年、GCC・C5という枠組みで加速している背景には、GCCの対ロシア関係の強化があるだろう。とりわけウクライナ戦争を経て、エネルギー及び食料安全保障を優先事項とするGCC諸国は、これらの輸送回廊の開拓、拡張への関心を強めている。これにあたって関係を強めている相手がロシアであり、その経路である中央アジアとの関係強化は重要な意味を持ちうる(イランとの関係改善についてもこの観点から見ることが可能である)。一方のロシアも、GCC諸国はアフリカ進出のための重要な中継地であることから、GCCが「経路固め」に勤しむことは望ましい事態だといえよう。

 

【参考】

長谷直哉「制裁下のロシア――「新たな現実」と中東へのアプローチ」『中東研究』546号、2023年1月

(研究主幹 高尾 賢一郎)

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