中東かわら版

№51 イスラエル:モサドがイラン領内でのイラン人テロ首謀者の拘束を発表

 2023年6月29日、イスラエル諜報特務庁(モサド)は、イスラエル人を標的とするキプロスでのテロ計画を指示していたイラン人、ユーセフ・シャフバージー・アッバースアリーロー氏を、イラン領内で拘束したと発表した。モサドはあわせて、同氏が容疑を認め、計画の詳細を話す映像を発表した。ここでは同氏が、イラン革命防衛隊諜報部門のトップ、モハンマド・カージミー氏から、同機関のメンバーを含めた複数の協力者(イラン人、パキスタン人)を介し、北キプロスからキプロスに侵入して、同地在住イスラエル人の暗殺を指示されていたことが語られている。モサドは、イランが近年試みたキプロス、トルコ、ジョージア、ギリシャでのイスラエル人暗殺計画を阻止してきたことを踏まえ、「我々は引き続き、世界中のユダヤ教徒及びイスラエル人に対する攻撃に、断固たる態度で行動する」と述べた。

 

評価

 近年、イスラエルはモサドの対イラン活動について、イラン国内で行われたものを含めて頻繁にアピールしている。実際にイラン人のイスラエル人攻撃計画が増えているのかは不明ながら、イスラエルがモサドの対イラン活動を宣伝する上で重要なのは、イランの脅威を内外に伝える点にあるといえよう。

 対内的には、司法改革案等に対する市民からの批判が強まる中、外交・治安面での功績を強調するという意味がイスラエル政府にはある。一方で対外的には、2023年3月のイラン・サウジ国交回復合意以降、イランが周辺アラブ諸国との関係構築を図ろうとする中、イスラエルとしてはイランを引き続き孤立させておきたいはずだ。6月20~22日にイランのアブドゥルラヒヤーン外相が湾岸諸国歴訪を果たしたタイミングで、イスラエルとしては、周辺アラブ諸国に対してイランの脅威を改めて訴え、逆に自国との関係強化を促したいところだろう。

 

【参考情報】

「イラン:アブドゥルラヒヤーン外相の湾岸諸国歴訪」『中東かわら版』No.49。

(研究主幹 高尾 賢一郎)

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