中東かわら版

№43 サウジアラビア:ファイサル・ビン・ファルハーン外相のイラン訪問

 2023年6月17日、ファイサル・ビン・ファルハーン外相がイランを訪問し、同国のライーシー大統領、アブドゥルラヒヤーン外相とテヘランで会談した。ファイサル・ビン・ファルハーン外相は、本会談を「前向きなもの」と評価しつつ、「内政不干渉の必要性」について協議したことを述べた。またこの際、サルマーン国王の代理としてライーシー大統領にサウジ訪問の招待状を手渡している。なおサウジ・イランの国交回復合意後、両外相が直接会談するのは、当事国を舞台としては初となる。

 

評価

 国交回復合意後も、サウジ側はイランへの警戒を緩めておらず、この点に関しては両国間に温度差が見られた。今次会談でも「内政不干渉」という、これまでのサウジによるイラン批判の常套句が相変わらず出されたことはその証左である。

 それでも今回、ファイサル・ビン・ファルハーン外相が会談を「前向き」と評価したことは、同外相による国交回復後初めてのイラン訪問ということとあわせて、多少の前進と見ることができる。この要因の一つは、今月6~7日にかけて実現した、サウジアラビアでのイラン大使館・領事館の再開であろう。3月以降、「合意」にとどまっていた国交回復が具体的な形で進展を見せたわけだ。

 一方、イランにおけるサウジ大使館・領事館の再開については、ファイサル・ビン・ファルハーン外相から早期の再開に向けた意欲が示されているものの、具体的なスケジュールがなんら示されていない。駐イラン・サウジ大使は既に任命されているが、これが誰かについての発表もない。この点、在サウジ・イラン公館が先んじて再開したことは、必ずしも二国間関係が順調に完全回復に向かっているサインというより、今月末に迫った巡礼(ハッジ)期間への対応としての性格が強いと見るべきであろう。

 

【参考】

「イラン:在サウジアラビア・イラン大使館が正式に再開」『中東かわら版』2023年度No.36。

(研究主幹 高尾 賢一郎)

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