中東かわら版

№38 サウジアラビア:OPECプラス会合を経た追加減産と対ロシア関係

 2023年6月4日、ウィーンでのOPECプラス会合を経て、同加盟国は2024年末まで現行の石油減産を継続することを決定した。これに沿ってアブドゥルアジーズ・エネルギー相は、サウジアラビアが2024年末まで日量50万バーレルの減産を続け、さらに7月には日量100万バーレルの追加減産を行うこと、また状況の推移に応じて追加減産を継続することを発表した。

 

評価

 今次のOPECプラス会合では、中軸の主張の違いに注目が集まった。すなわち、原油価格の上昇を目的に追加減産を望んだサウジと、現状維持が妥当とするロシアとの相違である。欧米諸国の経済制裁にあえぐロシアとしては、現在の価格下落を逆手にとった原油の薄利多売を経済危機への対策の一手としたい立場だが、一方のサウジは、原油輸出による利益を歳入の中心とすることから、薄利多売を選ぶ理由がない。

 最終的には、上述の通りOPECプラスとしては現状を維持し、サウジは自主的に追加減産を行うことが決定された。原油価格をめぐる立場の違いが現れた形だが、見方を変えれば、サウジ・ロシアが二国間関係を重視し、互いの主張を通させたということもできる。ウクライナ戦争の始まりに伴って米国が世界最大のLNG輸出国となる中、原油価格の下落を止めたいサウジと、原油及び石油製品の輸出ができない状況を打開したいロシアにとって、OPECプラスは米国へのカウンター・バランスの場として機能している。アブドゥルアジーズ・エネルギー相は会合後の会見で「信頼」を一つのキーワードに挙げたが、これはロシアとの今後の利益のすり合わせを念頭に置いたものだろう。7日には、ムハンマド皇太子がロシアのプーチン大統領と電話会談しており、会合での決定のフォローアップがなされたものと思われる。

(研究主幹 高尾 賢一郎)

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