中東かわら版

№23 リビア:東部政府の首相解任

 2023年5月16日、東部拠点の代表議会(HOR)は、東部政府「国民安定政府(GNS)」のバーシャーガー首相の解任を決定した。彼の後任には、ウサーマ・ハマーダ財務相が就任した。

 バーシャーガーは2022年2月にHORから首相に任命され、トリポリでの政権運営を目指し、西部政府「国民統一政府(GNU)」に政府権限の移譲を要求するなど、GNUと対立してきた。バーシャーガーを支持する民兵がトリポリに何度も進軍したものの、GNU部隊に阻まれ、最終的にGNSは中部シルトを活動拠点としていた。

  

評価

 ハフタル・リビア国民軍(LNA)総司令官やサーリフHOR議長などの東部勢力は、バーシャーガーが前政府「国民合意政府(GNA)」の内相を務めた実績や、出身地ミスラータの民兵に影響力を持つ点を評価し、彼を東部政府の首相に担ぎ出した。しかし、バーシャーガーはGNUから政権を奪取できず、東部勢力の期待に沿うような役割を果たせなかったため、解任された。一方、ハフタルはGNUと石油輸出再開に合意したり、全面的な武力衝突を避けたりするなど、ダバイバGNU首相と利害調整を行ってきた。このように、リビア政治の「1国2政府」は解消されてないものの、ハフタルとダバイバGNU首相が結託し、情勢の緊迫化を防いでいる。

 こうした中、リビア紛争での懸念は、ハフタルが東部勢力の結束を維持できるかである。ハフタルは2014年5月にイスラーム主義勢力掃討作戦を始め、同作戦に賛同する民兵や諸部族を自陣に入れながら、支配領域を拡大してきた。ハフタルの統率力が失われた場合、東部勢力が一枚岩でなくなり、分裂する可能性がある。今年80歳を迎えるハフタルはこの先、LNA総司令官ポストを引き継ぐことになり、後継者候補であるハフタルの息子らが次期指導者を目指し、権力闘争を激化させる恐れがある。現在、息子のハーリド及びサッダームはLNA傘下の旅団長を務めており、父の外交担当顧問ベルカーシムや長男サディークも外交面で存在感を示そうしている。この点を踏まえると、ハフタルは情勢の安定化に向けたLNA・GNU協調関係や東部勢力間の連帯にとって必要な存在となっている。

 

【参考】

「リビア:トリポリでの大規模な武力衝突」『中東かわら版』2022年度No.79。

「リビア:石油施設の封鎖解除、輸出の再開」『中東かわら版』2022年度No.55。

「リビア:トリポリで東西政府の支持民兵が衝突」『中東かわら版』2022年度No.19。

「リビア:東部の議会が新政府を承認、再び「1国2政府」へ」『中東かわら版』2021年度No.123。

「リビア:東部拠点の議会が次期首相を任命」『中東かわら版』2021年度No.113。

(主任研究員 高橋 雅英)

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