№20 トルコ:大統領・大国民議会(国会)議員選挙の実施
2023年5月14日、トルコ全土で大統領及び大国民議会(国会)議員選挙が実施された。投票は現地時間17時に締め切られ、高等選挙委員会(YSK)による開票作業が行われている。これまでの選挙では、投票当日に結果が明らかになっていたが、大統領選が大接戦となっており、本稿執筆時点(5月15日、午前10時時点)においてもなお、最終結果は明らかになっていない。
今回の大統領選挙は、現職のエルドアン大統領と、打倒エルドアンを掲げる野党6党連合の統一候補のクルチダルオール氏との事実上の一騎打ちとなったが、両候補者共に集計後も1回目の投票では過半数獲得には至らないとみられ(表1)、5月28日の決選投票に持ち越されることが濃厚となっている。
一方の国会議員選挙では(表2)、定数600議席のうち、与党公正発展党(AKP)を中心とした共和連合(人民連合とも訳される)が323議席の過半数を獲得する見込みとなった。最大野党の共和人民党(CHP)を中心とする国民連合は、善良党との議席数を合わせても211議席にとどまり、大統領制からより強化された議院内閣制への移行は困難な状況となった。
表1 大統領選挙の結果(暫定)
候補者名 | 得票率 | 所属政党 | 所属連合 |
レジェップ・タイイプ・エルドアン | 49.34% | 公正発展党 | 共和連合 |
ケマル・クルチダルオール | 45.00% | 共和人民党 | 国民連合 |
シナン・オーアン | 5.23% | 無所属 | ATA連合 |
ムハッレム・インジェ(5/11 撤退表明) | 0.43% | 故国党 | 連合なし |
表2 大国民議会選挙政党別得票率・獲得議席数(暫定)
政党名 | 得票率 | 獲得議席数 | 所属連合 |
公正発展党 | 35.67% | 266 | 共和連合 |
民族主義者行動党 | 10.12% | 51 | 共和連合 |
新福祉党 | 2.87% | 5 | 共和連合 |
共和人民党 | 25.62% | 168 | 国民連合 |
善良党 | 9.91% | 44 | 国民連合 |
緑の左派党(旧人民の民主主義党) | 8.93% | 62 | 自由・労働連合 |
出所:表1、2ともに『Sözcü』2023 SEÇİM SONUÇLARIより作成
評価
今次選挙は、2002年から与党に君臨する公正発展党(AKP)と2003年からトルコを率いてきたエルドアン大統領に対する信任投票であったと言える。「エルドアンか反エルドアンか」という構図の下、これまでの政策を支持するのか、新政権下での再出発を図ることを選択するのか、トルコ国民の動向が注目されていた。投票率は約88%と、1987年の選挙以来最高を記録したことからもわかるように、国民の関心も非常に高かったことが窺える。
現時点においては、決選投票が実施される可能性が現実味を帯びている。そうなった場合、エルドアン、クルチダルオール両候補のどちらが大統領の座を射止めるのかは、不明確だが、決選投票が決定した場合、一つのカギとなるのは5.25%を獲得した第3候補のシナン・オーアン氏に流れた票で、上位2候補のどちらが同氏を自陣営に付けるかが結果を左右し得る。このため、オーアン氏がキャスティングボートを握っているとも指摘できよう。
(主任研究員 金子 真夕)
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