中東かわら版

№7 カタル・バハレーン:ウラー宣言から2年以上を経た外交関係の再開

 2023年4月12日、リヤドのGCC本部でカタル・バハレーン両国代表団が、2021年1月のウラー宣言(サウジ・UAE・バハレーン・エジプト、通称「カルテット」と、カタルとの国交回復)にかかるフォローアップ会合を開いた。その後の個別の声明を通して、カタルとバハレーンは、両国間の外交関係の再開(大使館業務の再開)を発表した。

 

評価

 ウラー宣言を通してカタルとカルテット諸国との国交回復が発表されてから2年が過ぎた。この間、カタルの盟友と呼べるトルコとカルテットとの関係改善といった影響も見られたが、各国とカタルとの関係の進展は一様ではなかった。これは、カタルとの断交の決定要因が4カ国で少しずつ異なるためである。主な要因はカタルとムスリム同胞団とのつながり、そしてイランとの関係であった。前者については、同胞団自体の衰退を背景に、これをカタルとの断交要因としていたUAE・エジプトとの関係回復が進んでいる。一方でイランについては、警戒を解くグリーンライトに相当する要素に乏しく、これをカタルとの断交理由として重視するバハレーンとしては、ウラー宣言の履行が難しい状況にあった。

 こうした事情を考慮すれば、今般のカタル・バハレーン関係の進展は、今年3月のサウジアラビア・イラン間の国交回復合意の影響を多分に受けたものといえるだろう。サウジ・フーシー派の停戦協議、サウジ・シリア間の外交関係再開等、同合意に伴ってサウジの地域外交が活発化する中、周辺国にもその余波が届いている。

 

【参考】

「イラン・サウジアラビア:国交回復合意の発表後、初となる公式外相会談」『中東かわら版』No.1

「カタル:ユースフ・カラダーウィー氏の死去」『中東かわら版』2022年度No.89。

「 GCC・エジプト:カタル国交回復の進展」『中東かわら版』2020年度No.127。

(研究主幹 高尾 賢一郎)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

| |


PAGE
TOP