中東かわら版

№162 アルジェリア:内閣改造(第3次ベンアブドゥルラフマーン内閣)

 2023年3月16日、タブーン大統領は閣僚11人の交代を含む、内閣改造を実施した。新閣僚は、以下の通りである。

 

表 新閣僚リスト

外務・在外自国民コミュニティー相

アフマド・アッターフ

元外相(1996~1999年)、

元民主国民連合(RND)議員

財務相

ラジーズ・ファーイド

元財務省予算局長

青年・スポーツ相

アブドゥルラフマーン・ハマード

前アルジェリア・オリンピック委員会会長

デジタル化・統計相

マリーム・ベンミールード

前財務省傘下国土総局情報通信システム部長

商務・貿易促進相

タイイブ・ザイトゥーニー

RND党首

水利相

タハ・ダルバール

元水道公社(ADE)会長

運輸相

ユースフ・シュルファ

前労働・雇用・社会保障相

観光・手工業相

ムフタール・ディードーシュ

元国家観光開発機構(ANDT)職員

労働・雇用・社会保障相

ファイサル・ベンターリブ

前全国非被用者社会保障公庫(CASNOS)事務局長

環境・再生可能エネルギー相

ファーイザ・ダフラブ

前環境・再生エネルギー省気候変動中央局長

漁業・漁業生産相

アフマド・ビダーニー

前農業省監査官

(出所)国営通信「APS」をもとに筆者作成。

 

評価 

 今次内閣改造で特筆すべき点は、アルジェリア外交の舵取り役を担ってきたラマームラ外相の交代である。ラマームラはブーテフリカ前政権の中心人物であり、同政権の入閣経験者の大半が汚職事件で懲役刑を受ける中、彼は外交官としての国際舞台での豊富な経験が評価され、タブーン政権でも外相に抜擢された。しかし今般、ラマームラ解任の背景には、彼の影響力拡大に対するタブーン大統領の警戒心があったのではないかと考えられる。現時点で、タブーン大統領は来年の大統領選挙への出馬を明言していないものの、国際的に活躍するラマームラ外相が政治的野心を持ち、軍部や与党から支持を得ようと動くような事態を避けるため、早期に政権から排除したとの見方もできうる。

 新外相は、ゼルワール政権期(1996~1999年)の外相であるアッターフが再登板した。アッターフ新外相はブーテフリカ政権期に権力中枢部から離れ、野党勢力として政治活動を行っていた人物でもある。この点から、タブーン大統領にとって、政治面で競合相手にならないと予想されるアッターフを起用することに大きな障害はなかったと言える。その上、アッターフの外相起用は、元大統領かつ退役将校として影響力を持つゼルワール元大統領との関係維持を図るための好材料となる。一方、アッターフ新外相が前任者のように、国際社会でアルジェリアの存在感を際立たせることができるかは不透明であることから、彼の外交手腕を見極める上で、今後予定されるタブーン大統領のロシア及びフランス訪問や、アルジェリアのBRICS加盟の行方が注目される。

(研究員 高橋 雅英)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

| |


PAGE
TOP