中東かわら版

№161 チュニジア:新議会の発足

 2023年3月13日、チュニジアの新議会が発足し、サイード大統領が議会を停止した2021年7月以来初めて、議会が再開された。チュニジアでは、昨年12月と今年1月に議会選挙が実施され、2月25日に独立最高選挙機構(ISIE)が新たな国会議員154人(全161議席)に関する最終結果を発表した。初会合で、弁護士会のイブラーヒーム・ブーダルバーラ元会長が、賛成多数で国会議長に選出された。

 こうした中、国会議事堂の周囲には大規模な警察隊が配備され、議会の会合に関する取材は2011年以降初めて国際メディアに許可されず、チュニジアの国営メディアに限定された。また、ナフダ党をはじめ諸政党は、サイード大統領の権力奪取に基づく政治プロセスから生まれた新議会の活動を認めておらず、2021年7月以前の議会体制に戻すため、引き続きサイード政権と対峙していく構えである。

 

評価 

 チュニジア議会の活動が約1年半振りに再開したものの、2022年憲法により、議会権限は旧議会に比べて大幅に縮小した。さらに、ブーダルバーラ新議長も親大統領派「新共和国国家諮問委員会」の参加者であったことから、新議会はサイード大統領主導の政権運営を監視する役割をほとんど果たせない。こうした状況下、サイード大統領は全ての地方議会を解散する旨の大統領令に署名し、地方自治体レベルでの統制も強めようとしている。

 サイード大統領の強権に対し、国際社会の反応もより厳しくなっている。サイード大統領がサブサハラ・アフリカからの移民者を問題視する発言を行ったのを受け、世界銀行はチュニジアとのパートナーシップ枠組みに関する議論を一時停止すると発表した。また、欧州議会はチュニジアでのジャーナリストや政治家の相次ぐ逮捕に懸念を示し、サイード政権による反体制派への締め付けを非難する決議を賛成多数で採択した。サイード政権の存続自体がチュニジアの政治的混乱の引き金となっている現状に鑑みると、今後も同政権に対する国際社会の支援の在り方が大きく問われる恐れがあるだろう。

 

【参考】

「チュニジア:議会選挙第1回投票の暫定結果」『中東かわら版』No.130。

「チュニジア:議会選挙第2回投票の暫定結果」『中東かわら版』No.141。

「チュニジア:反大統領派への締め付け強化、逮捕相次ぐ」『中東トピックス』No.T22-11。※会員限定

(研究員 高橋 雅英)

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