中東かわら版

№144 チュニジア:内閣改造(第2次ナジュラー・ブーデン内閣)

 2023年1月30日~2月7日の期間、サイード大統領は閣僚3人の交代を含む、小規模な内閣改造を行った。サイード大統領が新閣僚を段階的に任命していることから、今後も更なる閣僚交代が行われる可能性がある。なお、1月7日にもベン・ハムザ貿易・輸出発展相が解任されたが、後任は現時点で明らかになっていない。新閣僚は、以下の通りである。

 

表 新閣僚リスト

外務・移民・在外チュニジア人相

ナビール・アンマール

前駐ベルギー・EUチュニジア大使、元駐イギリス大使

農業・水資源・水産相

アブドゥルマナアム・ベラーティー

軍少将、前軍監察総監、元スファックス空軍基地司令官

教育相

ムハンマド・アリー・ブーグディーリー

元チュニジア労働者総同盟(UGTT)民間部門担当副議長

(出所)国営通信「TAP」など各種情報をもとに筆者作成。

 

評価

 議会選挙でサイード大統領の支持率低下が顕著となった中、今次内閣改造は行われた。新閣僚の注目点は、①農業・水資源・水産相に軍将校が起用されたこと、②教育相にUGTTと対立する元組合員が任命されたこと、③ジャランディー外相の交代、である。

 まず、サイード政権での軍関係者の入閣は、ムラービト軍医官の保健相への任命といった前例があるものの、空軍出身のベラーティー少将が専門領域が異なる農業・水資源分野を管轄できるかに大きな疑問が生じる。このため、同人事の背景には、サイード大統領が政権を支える軍部の忠誠心を維持するため、軍関係者に閣僚ポストを配分した可能性があると考えられる。  

 次に、ブーグディーリー新教育相は2017年にUGTT副議長に就任したが、2021年にUGTT議長職の任期延長をめぐってタブービー現議長と対立するなど、UGTTに批判的な人物だ。サイード大統領は、こうしたUGTTの活動を熟知する元組合員を自陣に取り込むことで、UGTT現執行部を牽制する狙いがあるだろう。

 そして、解任されたジャランディー外相は、マシーシー前内閣から留任した数少ない閣僚であり、外交の場でサイード大統領による権力奪取の正当化を必死に訴えるなど、同大統領を全面的に支えてきた。こうした中、欧州で豊富な大使経験を持つアンマール新外相の起用は、サイード大統領が欧州各国との関係強化を望んでいる姿勢を示していると見られる。サイード大統領としては、欧州諸国がサイード政権による野党への締め付けに過剰に反応し、チュニジアの人権状況を問題視するような事態を避けるべく、アンマール新外相に欧州諸国との対話のパイプ役を期待していると考えられる。

(研究員 高橋 雅英)

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