中東かわら版

№141 チュニジア:議会選挙第2回投票の暫定結果

 2023年1月29日に議会選挙の第2回投票が実施され、独立最高選挙機構(ISIE)は31日に暫定結果を発表した。第2回投票では、第1回投票(2022年12月実施)で当選者が確定しなかった131の選挙区で候補者2名による決選投票が行われた。現時点で議会会派の構成は判明していないが、投票に関する暫定結果は、以下の通りである。

 

表 議会選挙第2回投票の暫定結果

有権者登録数

785万3447人(-128万3055人)

投票総数

89万5002票(-13万416人)

投票率

11.4%(+0.2%)

無効票及び白票

4万5898票(-2万3504人)

(出所)ISIEの発表をもとに筆者作成。※括弧内は第1回投票からの増減

 

評価

 今般の第2回投票でも第1回目と同様に、投票率は約11%の低水準となった。同結果を受け、サイード大統領は、低投票率の原因は有権者の間に議会自体に対する不信感が広がっていることだと主張し、自身の支持率は低下していない点を強調した。新議会は大統領主導の政治プロセスに少なからず賛同して立候補した国会議員が占めるため、サイード政権に対するチェック・アンド・バランスは更に失われる見通しである。

 こうした政治的混乱は、チュニジアの国際的信用度の低下につながっている。IMF新規融資の最終合意は当初予定よりも遅れている。また資金調達の遅延の影響により、米格付け会社「Moody’s」はチュニジアの自国通貨及び外貨建て長期債格付けを「Caa1」から「Caa2」に1段階引き下げ、最悪のシナリオとして債務再編の可能性を警告した。

 今次選挙に伴い、大統領主導の政治プロセスが終了したことで、この先、サイード政権はIMF新規融資の合意に向けて財政改革を本格化させていくと予想される。その一方、チュニジア労働者総同盟(UGTT)は補助金削減と国営企業の民営化に猛反対している。こうした状況下、UGTT傘下のチュニジア高速道路組合の事務局長が1月30~31日実施のストライキを理由に逮捕される事態が発生し、タブービーUGTT議長は同逮捕を、サイード政権によるUGTTの弱体化の試みであると主張した。加えて、ターヒリー報道官がサイード政権に圧力をかけるため、公共部門でのストライキの実行を示唆していることから、サイード政権・UGTT間の対立激化が社会経済状況にも深刻な影響を及ぼす恐れがある。

 

【参考】

「チュニジア:議会選挙第1回投票の暫定結果」『中東かわら版』No.130。

(研究員 高橋 雅英)

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