中東かわら版

№138 GCC:ブダイウィー新事務局長の就任発表

 2023年1月29日、GCCはクウェイトの外交官、ジャーシム・ムハンマド・ブダイウィー氏が2月1日に事務局長に就任することを発表した。祖国クウェイトはじめ、GCC加盟各国のハイレベル及びハジュラフ現事務局長がこれを歓迎した。

 ブダイウィー氏は1968年生まれ、1991年に米国ユタ大学を卒業後、1992年に外務省に入省した。外務省では、韓国、EU代表部、NATO代表部、ベルギー、ルクセンブルク(非駐在)等で大使を務め、直近では2022~2023年に駐米大使の任に当たっていた。以下表の通り、GCC事務局としては7代目となる。

 

氏 名

出 身 国

在 任

1

アブドッラー・ヤアクーブ・バシャーラ

クウェイト

1981.5~1993.3

2

ファーヒム・ビン・スルターン・カーシミー

UAE

1993.4~1996.3

3

ジャミール・ビン・イブラーヒーム・フジャイラ―ン

サウジ

1996.4~2002.3

4

アブドゥルラフマーン・ビン・ハマド・アティーヤ

カタル

2002.4~2011.3

5

アブドゥルラティーフ・ビン・ラーシド・ザイヤーニー

バハレーン

2011.4~2020.2

6

ナーイフ・ビン・ファラーフ・ハジュラフ

クウェイト

2020.2~2023.1

7

ジャーシム・ムハンマド・ブダイウィー

クウェイト

2023.2~

表:歴代のGCC事務局長 

 

評価

 GCCの事務局長は3年任期で、過去には初代事務局長が最も長い4期12年を務めた。昨年末の時点で、ハジュラフ現事務局長が1期で交代すること、次の事務局長が引き続きクウェイトから選出されることはGCC内で合意されていたが、なぜハジュラフ事務局長が最短の1期で交代となったかについては明らかにされていない。

 2011年以降のザイヤーニー事務局長の在任期、GCCの課題は、「アラブの春」の余波による政情不安をいかに防ぐか、「イスラーム国」等の過激主義組織の伸張にいかに対応するか、そしてそのためにGCC加盟国間の利害調整をどう行うかにあった。この間、各国が政情不安に陥ることはなかったものの、サウジとイランの断交や、サウジ・UAE・バハレーンとカタルとの断交といった地域諸国間の分断が続いた。

これに対し、2020年に就任したハジュラフ事務局長の在任期、カタル断交については2021年1月のウラー宣言をもって終了し、以降はGCC加盟国間及び周辺諸国間との地域連携を強調する姿勢が顕著である。こうした現状の維持・強化がブダイウィー新事務局長の当面の課題であることが、各方面から寄せられた就任の祝辞からうかがえる。

 逆にいえば、ハジュラフ事務局長の退任にはこの期待に応える見通しが不足しているとの評価があった可能性も否定できない。ただし、それは今後、同人がいかなるポストに就くか(就かないか)とあわせて検討すべきことだろう。

(主任研究員 高尾 賢一郎)

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