中東かわら版

№136 アルジェリア:国軍参謀総長のフランス訪問

 アルジェリア人民軍(ANP)のシェングリーハ参謀総長は2023年1月23~27日、フランスを公式訪問した。ANP参謀総長によるフランス訪問は2006年以来、17年振りである。

 アルジェリア国防省によると、シェングリーハ参謀総長は訪問中、マクロン大統領やルコルニュ軍事相、ビュルカール仏軍統合参謀総長と会談し、軍事・安全保障分野での協力促進について協議したほか、フランス西部のソミュール軍事学校を視察した。

 

評価

 今般のシェングリーハ参謀総長によるフランス訪問は、昨年8月のマクロン大統領のアルジェリア訪問に続く、二国間関係の強化の一環である。アルジェリア大統領府によると、両国の信頼関係の構築に向け、5月にタブーン大統領がフランスを訪問する予定である。両国関係はこれまで歴史問題や査証発給数で度々緊張してきたが、昨年以降は改善傾向が見られる。

 アルジェリアがフランスとの関係改善に前向きな背景には、ロシアへの過度な依存を回避する狙いがあると考えられる。ロシアはアルジェリアにとって歴史的友好国であるものの、アルジェリアを取り巻く地域情勢における両国の立場は異なる。リビア紛争では、アルジェリアはトルコと足並みを揃え、トリポリ拠点の西側政府を全面的に支持してきた一方、ロシアは東部勢力の中心人物であるハフタルに肩入れしてきた。また、アルジェリアはロシアの民間軍事会社「ワグネル」のマリ展開に懸念を抱いていると見られ、タブーン大統領は先月のフランス日刊紙『フィガロ』のインタビューで、ワグネルのマリ駐留に賛同しない考えを初めて示した。こうした中、アルジェリアはフランスの国連安保理常任理事国としての役割を再認識し、地域情勢の対応で連携を模索している。

 また、アルジェリアは西サハラ問題などを理由に対立するモロッコへの対抗意識から、フランスと関係を強化することで、フランス・モロッコ関係改善に楔を打とうとしていると言える。マクロン大統領は歴代大統領と異なり、親モロッコ政策を堅持しておらず、西サハラ問題で明確な立場表明を控えている。アルジェリアとしては、ガス追加供給や軍事協力の促進を通じて、マクロン政権と良好な関係を築きながら、フランスの西サハラ政策にも影響力を行使する思惑があるだろう。

 

【参考】

「アルジェリア:タブーン大統領が「ワグネル」のマリ展開に立場表明」『中東トピックス』No.T22-09。※会員限定。 

(研究員 高橋 雅英)

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