中東かわら版

№130 チュニジア:議会選挙第1回投票の暫定結果

 2022年12月17日に議会選挙第1回投票が実施され、19日、独立最高選挙機構(ISIE)は暫定結果を発表した。今次議会選挙は、サイード大統領が2021年7月に活動を停止させた議会(2019年議会選挙で選出)に代わる新議会を発足させるためのものであり、サイード大統領主導の政治プロセスの一環である。

 ISIEによると、第1回投票では全161議席のうち21人が各選挙区で過半数票を得て当選した。残りの議員を選出する第2回投票は、来年1月20日に選挙キャンペーンが開始され、3月3日に最終結果が発表される予定である。第1回の暫定結果は、以下の通りである。

 

表 議会選挙第1回投票の暫定結果

有権者登録数

913万6502人

投票総数

102万5418票

投票率

11.2%

無効票及び白票

6万9402票

(出所)ISIEの発表をもとに筆者作成。

  

評価 

 今回の議会選挙は、ナフダ党や自由憲法党(PDL)などの主要政党が投票の棄権を呼びかけ、国民の関心も低かったことから、投票率は7月の改憲に係る国民投票時(約30%)を下回った。県別の投票率では、サイード大統領の支持基盤とされるスーサ県(11.7%)や首都のあるチュニス県(6.8%)でも低調に終わった。第2回投票でも、反大統領派の野党や市民団体によるボイコットが続く見通しであるため、大多数の国民の不参加を理由に、新議会は正統性の問題に直面するだろう。

 その一方、サイード大統領としては、7月の改憲を通じて大統領権限の拡大を実現できたことから、今次選挙結果を重要視していないと考えられる。立候補者の多くはサイード大統領を支持する人々である。たとえ彼らが当選後、サイード大統領に反対する立場に転じたとしても、新議会は大統領権限を抑制する役割を果たせないことから、大統領を中心とした政権運営が妨害されることはないだろう。

 しかし、低投票率に対する国際社会の反応が注目される。サイード大統領がチュニジア国内で支持を失っていることがより明白となり、サイード政権に対する支援の在り方が問われる。財政面で頼みの綱であるIMF新規融資は10月に事務レベル合意したものの、12月19日のIMF理事会の議題から外され、来年1月以降に協議されることとなった。こうした資金調達の遅れは、食料や燃料など各種補助金の縮小につながり、国民生活へのしわ寄せが大きくなることで、第2回投票に向けて反大統領の気運がより高まると予想される。

 

【参考情報】

<中東かわら版>

・「チュニジア:新憲法の承認、大統領権限の拡大へ」No.58(2022年7月27日)

・「チュニジア:IMFとの新規融資で事務レベル合意」No.103(2022年10月17日)

 

(研究員 高橋 雅英)

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