中東かわら版

№91 サウジアラビア:ムハンマド皇太子が首相に就任

 2022年9月27日、国王令を通じた内閣改造により、ムハンマド皇太子が首相に任命された。理由については説明されていないが、統治基本法(サウジにおける最上位の制定法)の第56条では、国王が首相を務めると規定されているため、例外措置ということになる。なお首相が主催する定例閣議等は、今後も原則として国王(前首相)が主催する。

 また、ムハンマド皇太子は副首相と国防相を兼務していたが、副首相については空席となり、国防相についてはハーリド・ビン・サルマーン副国防相が任命された。この他、ユースフ・ビン・アブドッラー・ブニヤーン氏(SABIC:サウジ基礎産業公社CEO他)が教育相に任命された。

 

評価

 内閣改造といっても、新規の入閣は教育相の1名であり、自ずとムハンマド皇太子の昇格に注目が集まっている。もっとも、すでに同皇太子の政治的実権が確立しつつあること、また閣議等の主催は引き続き国王が行うこと等を考えれば、今般の首相昇格がムハンマド皇太子の権限強化と呼べるかはまだ不明である。国王から皇太子への権限移譲の一環に変わりはないだろうが、実情としては、86歳とされる高齢のサルマーン国王の役割(とりわけ外国要人接遇等)を負担するのが主たる目的ではないだろうか。

 この点、むしろ注目すべきはハーリド・ビン・サルマーン副国防相の国防相昇格であろう。2019年の副国防相就任の際には、長期化し始めたイエメン戦争をムハンマド皇太子(当時は国防相兼務)から引き継ぎ、ともすれば損な役回りを引き受けたようにも見えた彼だが、今回の国防相昇格によって、サルマーン国王の嫡子、並びにムハンマド皇太子の実弟としてのプレゼンスを示した形となる。

(研究員 高尾 賢一郎)

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