中東かわら版

№73 クウェイト:2016年以来となる駐イラン大使の任命

 2022年8月14日、バドル・アブドッラー・ムニーフ大使がテヘランでアブドゥルラヒヤーン・イラン外相に信任状を奉呈した。クウェイト大使のイラン着任は2016年の大使召還以来、初めてとなる。すでに駐クウェイト大使を着任させているイラン側は、キャナアーニー外務報道官が今回の措置を、クウェイトとの友好的かつ建設的な関係構築の一歩として評した。

 

評価

 2016年1月3日にサウジがイランと国交を断絶したことを受けて、翌4日にはバハレーンがこれに続いた。一方、クウェイトとUAEは大使召還による外交関係格下げにとどめることでイランとの関係を維持してきた。イランと言えば8月以来、EU仲介による核交再開に向けた動きが報じられているが、今次の大使召還の遠因はよりローカルな動き、具体的には昨年4月以来のサウジ・イランの直接交渉だと考えられる。これについてはまだ特段の成果について報じられず、特にサウジ側はイランとの交渉を成果としてアピールすることに慎重な姿勢を貫いているものの、交渉自体はイラクを仲介役として、途切れることなく実施されている。もとよりクウェイトの対イラン関係の格下げはサウジと足並みを揃える意味合いが強かった。したがって、サウジ・イラン間の緊張緩和がクウェイトの対イラン関係を前進させるのは自然なことである。UAEについては、まだ具体的な動きは見られないものの、クウェイト同様に駐イラン大使の任命を検討中であるとの報道も見られ、イラン側はこれに「早晩の実現を期待する」旨のコメントを出している。

 昨年のサウジ・カタル関係、及びこれに続くサウジ・トルコ関係の改善を経て、GCC諸国はこの数年に生じた域内の緊張を緩和する方向に舵を切っている。過度にサウジと足並みを揃えるわけではなく、仲介的な立場を是としてきたクウェイトからすれば、こうした動きは歓迎すべきものであろう。一方、GCCがイランへの警戒を弱める事態が望ましくない国もあり、その筆頭であるイスラエルは今回の駐イラン大使着任について、具体的なコメントは出していないものの国内各紙で取り上げており、高い関心がうかがえる。イスラエルと国交を結んでいるUAEが駐イラン大使任命に慎重である背景には、こうした事情もあるだろう。

(研究員 高尾 賢一郎)

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