№72 エジプト:内閣改造(第3次マドブーリー内閣)
2022年8月14日、シーシー大統領は、代議院での承認を経て、閣僚13名の交代を含む内閣改造を行った。新たに任命された閣僚は以下の通り。
大臣ポスト名 |
氏名 |
備考 |
教育・技術教育相 |
リダー・ヒガージー |
前教育副大臣 |
保健・人口相 |
ハーリド・アブドゥルガッファール |
前高等教育・科学研究相;元アイン・シャムス大学歯学部長 |
移民・在外国民相 |
スハー・サミール |
元アイルランド大使;女性 |
地方開発相 |
ヒシャーム・アームナ |
前ブハイラ県知事;元軍人 |
高等教育・科学研究相 |
ムハンマド・アイマン・アーシュール |
前アイン・シャムス大学工学部長 |
文化相 |
ネヴィーン・キーラーニー |
前芸術評論学院長;女性 |
民間航空相 |
ムハンマド・アッバース |
前空軍司令官;中将 |
軍需産業担当国務相 |
ムハンマド・サラーフッディーン |
前国防省全国軍需産業局副局長;少将 |
観光・遺跡相 |
アフマド・イーサー・タハ |
前CIB銀行リテール・バンキング部門CEO |
労働力相 |
ハサン・ムハンマド・シハータ |
前エジプト労働組合総連盟会長 |
公企業部門相 |
マフムード・カマール・イスマト |
元エジプト空港公社取締役会長 |
貿易・産業相 |
アフマド・サミール・マフムード |
前議員(国民未来党);経済問題委員会委員長 |
水資源・灌漑相 |
ハーニー・アーティフ・スワイラム |
カイロ・アメリカン大学教授 |
(出所)アフラーム紙などをもとに筆者作成。
評価
今次内閣改造は、比較的多くの人数が交代した大規模なものであった。交代された大臣には、2015~2016年から6~7年にわたり大臣を務めていたシャウキー教育相、ナビーラ・マクラム・ウバイド移民・在外国民担当相、サアファーン労働力相、アブドゥルアーティー水資源・灌漑相の4名も含まれた。一方で、ウクライナ情勢の影響の対応で重責を担うマイート財務相、メセルヒー供給・国内交易相、ムッラー石油・鉱物資源相や、11月に開催を控えるCOP27で議長を務めるシュクリー外相は据え置かれた。
この中で注目されるのは、アブドゥルアーティーの後任として水資源・灌漑相に任命されたハーニー・アーティフ・スワイラムの力量である。エジプトは、エチオピアがナイル川上流に建設したルネサンス・ダム(GERD)で下流国の合意なく一方的に貯水を進めていることは、エジプト国民の生存の権利を著しく脅かすとして強い懸念を示してきた。このため、エジプトは、下流国のエジプトとスーダンを含めた3カ国でGERDの管理に関する合意を締結することをエチオピアに対して求めてきた。しかし、合意に向けた交渉は約10年間失敗し続けている。前任者のアブドゥルアーティーは大臣就任前からGERD交渉団の一員を務める交渉経験者だったが、新たに任命されたスワイラムは学者出身である。エジプト外交最大の課題ともいえるGERD交渉にスワイラムがどのように取り組むのか注目される。
(上席研究員 金谷 美紗)
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