中東かわら版

№57 エジプト:ロシアがエジプトへの穀物輸出を確約

 2022年7月24日、ロシアのラブロフ外相はアフリカ諸国外遊の最初の行き先としてエジプトを訪問し、シーシー大統領、シュクリー外相とそれぞれ会談した。ラブロフ外相はシーシー大統領にロシア・ウクライナ戦争の最新情報をブリーフし、ロシア・エジプト関係を強固にしたいというプーチン大統領からのメッセージを伝えた。また、食糧供給、石油・ガス部門における二国間協力について協議した。

 シュクリー外相との会談後、ラブロフ外相は、ロシアはエジプトからの穀物輸入要請の全てに対応することを約束すると発表した。プーチン大統領が、シーシー大統領との最近の電話会談でこの点を強調したことも明らかにした。

 

評価

 穀物輸出の確約は、深刻な食糧危機に直面しているエジプトにとって極めて重要である。エジプトは世界第1位の小麦輸入国で、全輸入量のうちロシアの割合は60%以上、ウクライナの割合は20%以上を占め、小麦輸入の80%を両国に依存している。パン価格の上昇によって国民の政府に対する不満が増大するリスクもあるため、エジプト政府にとって小麦の安定的供給は体制の安定化にも繋がる重要課題である。

 ただし、ラブロフ外相の発表は政治的な意味合いが強い。ウクライナ侵攻に関してロシアに対する国際社会の批判が強い中で、ロシアはエジプトが最も欲するものを与えると約束することで、エジプトをロシア側に引き付けようと試みている。アジア、中東、アフリカには、ロシアのウクライナ侵攻を公然と非難しない国が多いが、エジプトもそうした国の一つである。なぜなら、食料輸入やエネルギー部門において、ロシアとの協力が不可欠であるからだ。このような姿勢は、ラブロフ外相訪問を報じたエジプト国営紙が同外相の主張を多く掲載し、エジプト側の反応として、シーシー大統領とシュクリー外相はウクライナ危機の外交的手段による解決を求めた、とだけ記した報道ぶりによく表れている。

 また、エジプトへの穀物輸出の確約が、ロシア軍のオデーサ港攻撃の直後に発表された点にも、ロシアの政治的意図が透けて見える。ロシアとウクライナは、22日、トルコと国連の仲介で穀物輸出で合意したが、翌23日にロシア軍がオデーサ港を攻撃したため、早くも合意の有効性に暗雲が立ち込めた。その翌日、ラブロフ外相はトルコと対立関係にあるエジプトに穀物輸出を約束した。トルコとしてはロシアに面子を潰されたと言わざるをえない。穀物輸出仲介交渉で中立的立場を貫いたトルコに対するロシアの不満を見て取れる。ウクライナ戦争の長期化によって、穀物輸出の問題はロシアやウクライナの外交カードに利用される機会が増えると思われる。

 

【参考情報】

*関連情報として、下記もご参照ください。

<中東かわら版>

・「トルコ:黒海からの穀物輸出でロシア・ウクライナが「歴史的」合意」2022年度No.56(2022年7月25日)

(上席研究員 金谷 美紗)

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