№27 チュニジア:労組が6月16日にゼネスト実施を予告
2022年5月31日、チュニジア労働者総同盟(UGTT)は、6月16日に公的部門でゼネストを実施すると発表した。この背景として、政府とUGTT間の賃上げ交渉が決裂したことがあった。ゼネストの対象は、159の公的機関及び国営企業に及び、全職員が同日に職務を停止する見通しである。また、UGTTはゼネスト実施に際して、以下の点を政府に要求している。
- 2021年12月9日発出の通達No.20(労使交渉に係る政府の事前承認制)の廃止
- 政府・UGTT間の全ての合意事項の履行
- 2023年までの購買力回復を目標とした政労交渉の開始
- 国営企業の全面的な民営化を実施しないこと
- 連帯社会拠出金(1%)の取り消し
- 公的機関に関連する交渉の妥結
評価
今般、UGTTがゼネストを強行する目的は、政府による財政改革を阻止することである。財政改革はIMFから新たな融資獲得のために進められており、マシーシー前内閣に続き、昨年7月に実権を握ったサイード大統領も、公務員の昇給停止や補助金の段階的削減などの緊縮経済策を打ち出している。一方のUGTTとしては、物価が急速に上昇する状況下、労働者の給与引き上げや雇用維持を実現することで、存在感を示すのが狙いである。
この先、政治面でもサイード大統領とUGTTとの対立が激化する恐れがある。サイード大統領は大統領主導の政治体制の構築に向け、7月25日に改憲に係る国民投票を実施する方針である。UGTTは改憲プロセスで、政党や主要国内団体が参加する形の国民対話を求めているが、サイード大統領は応じない構えである。こうした状況下、国内最大の組織的動員力をもつUGTTは大統領から政治経済面での譲歩を引き出すため、ゼネスト期間を延長したり、組合員による街頭デモを主導したりして、大統領への圧力を強めていく展開が予想される。他方、全権を掌握するサイード大統領は対抗措置として、司法を用いてUGTTの活動を抑え込む可能性が考えられる。
(研究員 高橋 雅英)
◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/