中東かわら版

№3 ヨルダン:ハムザ王子が王子の称号の放棄を発表

 2022年4月3日、ハムザ王子(元皇太子;フセイン前国王の四男、アブドッラー2世国王の異母弟)は自身のツイッター・アカウントを通じて、王子の称号を放棄すると発表した。ツイッター上に掲載されたハムザ王子の署名入り声明には、「最近数年間で私が見て感じてきた中で、私は(…)我々の諸制度の現在の方法論、方向性、手法が自分の信念と相容れないとわかった。よってアッラーと良心への忠誠から、私は王子(アミール)の称号を放棄する」と書かれた。現時点で、王宮府からハムザ王子の声明に対する反応はない。

 ハムザ王子は、2021年4月、「ヨルダンの安定を揺るがす行動」を計画した容疑で拘束された。その後間もなくして、王宮府はアブドッラー2世国王とハムザ王子が共に行事に参加した様子を発表し、両者の和解を示唆していた。また、今年3月初旬、王宮府は国王がハムザ王子から謝罪の書簡を受け取ったと発表していた。

 

評価

 ハムザ王子自らが謝罪を申し入れたと王宮府が発表した1カ月後に、ハムザ王子が称号放棄を発表し、王宮府から音沙汰がない現状は、ハムザ王子が国王との協議や調整なく一方的に称号放棄を発表したことを示唆している。もしそうであれば、国王とハムザ王子との溝はこの一年間埋まることなく存在し、国王側がハムザ王子の動きを強制的に抑え込もうとしたことに同王子が反発したと考えられる。

 アブドッラー2世国王の長男・フセイン皇太子(1994年生)への王位継承は確実視されており、ハムザ王子と国王との確執が王位継承ラインに影響を及ぼす可能性は低い。しかし、称号放棄を決意したハムザ王子が、今後アブドッラー2世体制に対してどのような行動に出るかは注目しなければならない。

【参考情報】

<中東かわら版>

・「ヨルダン:ハムザ王子らの逮捕」No.2(2021年4月6日)。

(上席研究員 金谷 美紗)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

| |


PAGE
TOP