中東かわら版

№119 トルコ・UAE:エルドアン大統領のUAE公式訪問

 2022年2月14~15日、エルドアン大統領はUAEを公式訪問し、アブダビのムハンマド・ビン・ザーイド皇太子と会談した。両首脳は、最新の地域的・国際的な問題や関心事に加え、二国間関係のさらなる強化及び、様々な分野における協力と共同事業を推進する見通しについて検討した。また、同皇太子はトルコの「友好的な立場」、特に最近の事案である、イエメンのアンサールッラー(フーシー派)によるUAE攻撃をトルコが非難したことに謝意を表明し、エルドアン大統領の訪問が、二国間のパートナーシップに一層の弾みをつけるだろうと語った。

 首脳会談後には、両国の代表団による協議が実施され、以下の13項目に関する協定・覚書(MoU)等が両国関連機関の間で交わされた。

 

(1)保健・医療(MoU)

(2)先端技術の交流(MoU)

(3)気候変動対策(MoU)

(4)文化交流(MoU)

(5)包括的経済パートナーシップに向けた共同声明

(6)農業分野の交流(MoU)

(7)陸・海の交通(MoU)

(8)青年交流(MoU)

(9)災害対応・危機管理(MoU)

(10)気象研究(MoU)

(11)メディア協力(協定)

(12)国防分野の協力(基本合意)

(13)文書・アーカイブ(協力議定書)

 

 この他15日に、エルドアン大統領はUAEの実業家らとの会合で、「UAEは域内におけるトルコの主要な貿易相手国の一つ」であるとし、トルコへの投資を呼びかけるとともに、ビジネス環境が魅力であることを強調した。また、ムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ皇太子が2021年11月にアンカラを訪問したことは、二国間関係に「新たなページを開いた」、トルコ・UAEが経済的に補完し合う国として、短期間で大きな進展を遂げることができると確信している、と語った。

 

評価

 今般のエルドアン大統領のUAE訪問は、2021年11月24日のムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ皇太子のトルコ訪問を受けてのものである。同時期、エネルギー、環境、金融、貿易分野に関する10の二国間協定の覚書(MoU)を締結しただけでなく、トルコはUAEから100億ドルの投資を引き出した。

 エルドアン大統領は、11月の会談時に出来るだけ早期にUAEを訪問する旨言及している他、同首脳会談のフォローアップとして、12月13~15日にチャウシュオール外相が訪問し、ムハンマド・ビン・ラーシド・ドバイ首長、ムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ皇太子と経済・投資・貿易分野における二国間の関係強化について協議した。さらに、年が明けた2022年1月19日にはシェントプ大国民議会議長が訪問し、グバーシュ連邦国民評議会議長、サイフ・ビン・ザーイド副首相兼内相と会談する等、直近まで断絶状態にあったとは思えないほど活発な外交関係を展開している。

 エルドアン大統領の今次訪問で合意した13項目は、2021年11月時点からさらに裾野を広げ、経済のみならず幅広い分野において二国間関係強化を目指す狙いがあるとみられる。ウクライナ情勢の余波がトルコ経済にも影響を与える状況下、域内主要国であるUAEとの関係再構築はトルコ経済の大きな柱となる。

  

(研究員 金子 真夕)
(研究員 高尾 賢一郎)

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