中東かわら版

№102 トルコ:アルメニアと第1回関係正常化協議を開催

 2022年1月14日、トルコとアルメニアの関係正常化に向けた第1回協議がモスクワで開催された。同会談には、トルコから元駐米大使のセルダル・クルチ、アルメニアから国民議会副議長のルーベン・ルビニアン両特使が参加し、約1時間半、非公開で行われた。両国は、長年にわたる対立からの関係修復を目指して、外交関係樹立、国境の開放、二国間の経済・貿易・輸送プロジェクト締結に向けたロードマップを策定した。また、信頼醸成措置の一環として、トルコはアルメニアの首都エレバンへのチャーター便を再開し、アルメニアはトルコ製品の禁輸解除を決定した。

 会談終了後、トルコ外務省は「最初の会談は、前向きで建設的な雰囲気の中で行われ、二国間の対話による正常化プロセスについて予備的な見解を交換した。両者は「完全な正常化」を目指し、前提条件なしに交渉を継続することで合意した」と発表した。また、第2回会合の開催時期と場所は外交ルートを通じて、しかるべき時期に決定されることを明らかにした。

 両国の関係者が公式協議を行うのは2009年10月以来、約12年ぶりで、同協議開始の決定は、ロシア、米国、フランス、OSCEミンスクグループをはじめ、欧米諸国および、国際機関が支持を表明している。  

評価

 

 2021年以降、トルコは関係が悪化していた周辺国と正常化に向けた動きを加速させており、今次協議もその一環とみられる。

 トルコは1993年のナゴルノ・カラバフ紛争発生時にアルメニアと敵対するアゼルバイジャンとの連帯を示すため、共同国境を封鎖してきた。それ以来、二国間には外交関係のみならず、直接の貿易ルートも構築されていないが、2021年の間接的な貿易額は約380万ドルに上ると推計されている。

 2009年10月10日、エルドアン政権は善隣外交の一環として、アルメニアとの外交関係樹立を模索し、共同国境を再開するための「チューリッヒ議定書」に署名した。だが、アゼルバイジャンの猛反発により、あと一歩のところで批准に届かなかった経緯がある。

 2020年10月に再度発生したナゴルノ・カラバフ紛争では、トルコが即座にアゼルバイジャンへの全面支持を表明したことから、対アルメニア関係は一層悪化した。

 同紛争はアゼルバイジャンの勝利に終わったが、トルコのナゴルノ・カラバフ紛争への間接的な介入は、トルコはアルメニア系住民が多数居住する米国やフランスをはじめ、欧米諸国から強い非難を浴び、トルコと欧米諸国の間に更なる関係悪化をもたらした。

 2021年1月に誕生した米国のバイデン政権は、アルメニア・ロビーの支援を受けていることもあり、トルコの強硬姿勢に厳しい態度で応じた。就任直後の2021年4月25日、米国大統領としては初めて、オスマン帝国時代末期の「アルメニア人虐殺」問題を「民族大量虐殺(ジェノサイド)」と認定したことにも繋がったと考えられる。

 トルコは今次会合で、次回以降は第三国の介入なしに、二国間での直接交渉を希望すると表明した。しかし、コーカサス地域での影響力を保持したいロシアと、アゼルバイジャンに近いトルコを警戒するアルメニアが同意するかは不透明な状況だ。また、トルコ・アルメニア間には、前述の「アルメニア人虐殺」事件をめぐる対立が横たわっており、今後の交渉は容易ではないとみられるが、初回協議で具体的な成果が出されたことは評価できよう。 

 

【参考情報】

 *関連情報として、下記レポートもご参照ください。

 <中東トピックス(会員限定)>

・「トルコ:アルメニアとの関係改善に向けた動き」No.T21-09 2021年12月号

 

(研究員 金子 真夕)

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