中東かわら版

№77 チュニジア:元ナフダ党幹部が新党の結成へ

 2021年10月28日、元ナフダ党幹部のアブドゥルラティーフ・マッキー氏は新党を結成する方針を示した。ナフダ党では9月25日にマッキー氏を含む党幹部113人が離党し、そのうち約70人が新党に合流する予定である。加えて、ムールー副党首が新党の党首に就任するとの報道もある。こうした相次ぐ離党の背景には、党執行部がサイード大統領による議会停止措置を解除できなかったことや、ガンヌーシー党首が党首任期の三選禁止条項を遵守していないことに対する不満の高まりがある。新党結成により、この先も離党者が増加する見通しである。

 ナフダ党が分裂に向かう中、サイード大統領は司法を利用して同党への圧力を強めている。司法当局は8月に2019年議会選挙時の外国資金の違法受領や違法なロビー活動契約の容疑で同党に対する調査に着手した。10月26日には党本部のコンピュータ機器やサーバーを押収し、容疑に関連する電子メールの解析を進めている。

評価

 元ナフダ党幹部の新党結成により、これまでの党執行部・若手党員間の対立軸に加え、幹部間の亀裂も鮮明となった。特に、2011年の革命まで海外で亡命していたグループ(ガンヌーシー党首など)と、チュニジア国内で活動し拘束された経験を持つグループ(ムールー副首相やマッキー氏など)間の対立は深刻である。国内拘束組は、ガンヌーシー党首が2013年の国民対話でナフダ主導政権の退陣を承諾したことや、2016年に政策指向性が異なる世俗派・チュニジア呼びかけ党と連立を組んだことなど、譲歩を重ねる海外亡命組の姿勢に不信感を募らせていた。こうした海外亡命組に対する国内拘束組の不満が今回の党分裂の根底にあると言える。この先、新党結成に伴いナフダ党の支持基盤が分裂することで、2011年以降の議会選挙で発揮してきた同党の動員力が失われると予想される。その場合、獲得議席数は大きく減少し、同党が再び議会第1党になる可能性は低いだろう。

 今後、サイード大統領がナフダ党に対して追加の司法措置を講じるかが注視される。同大統領は9月22日の憲法停止発表により全権を掌握し、現在は改憲と選挙法改定の実現に向けて国民対話を準備している。一方のナフダ党は議会の再開を強く要求しており、大統領主導の国民対話に参加しない見通しである。こうした参加拒否を貫くナフダ党に対し、サイード大統領は非合法化カードを示すことで、譲歩を迫ることも考えられる。加えて、元ナフダ党幹部による新党に対しては、政党認可を付与しないことで政治領域からの排除を目論むだろう。ナフダ党は現在、大統領の攻勢と党分裂により革命後最大の危機に直面している。

 

【参考情報】

<中東かわら版>

・「ナフダ党に対する司法調査の開始」No.44(2021年7月29日)

・「チュニジア:ナフダ党内の対立激化」No.45(2021年8月5日)

(研究員 高橋 雅英)

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