№48 シリア:第2次アルヌース内閣の成立
アサド大統領は、5月の大統領選挙での再選を受けて新内閣を任命した。首相には引き続きフサイン・アルヌースが任命された。閣僚リストは以下の通り。
※新たに任命された人物を水色で示した。
首相 |
フサイン・アルヌース |
2020-;バアス党;2014年米国制裁対象 |
副首相兼国防相 |
イマード・アリー・アブドッラー・アイユーブ |
2018-;参謀本部長(2012-);少将 |
ワクフ相 |
ムハンマド・アブドゥルサッタール・サイイド |
2007-;2012年EU制裁対象 |
大統領府担当相 |
マンスール・アッザーム |
2009-;2012年EU制裁対象 |
地方自治・環境相 |
フサイン・マフルーフ |
2016-;バアス党;2016年EU制裁対象 |
行政開発相 |
サラーム・サッファーフ |
2017-;女性 |
経済・対外通商相 |
ムハンマド・サーミル・ハリール |
2017- |
内相 |
ムハンマド・ハーリド・ラフムーン |
2018- |
観光相 |
ムハンマド・ラーミー・マルティーニー |
2018- |
高等教育科学研究相 |
バッサーム・イブラーヒーム |
2018- |
公共事業・住宅相 |
スハイル・アブドゥルラティーフ |
2018- |
通信技術相 |
イーヤード・ハティーブ |
2018- |
文化相 |
ルバーナ・ムシャウフ |
2020-;元文化相(2012-14);女性 |
教育相 |
ダーラム・タッバーウ |
2020- |
法相 |
アフマド・サイイド |
2020- |
水資源相 |
タマーム・ラアド |
2020- |
財務相 |
カナーン・ヤーギー |
2020- |
運輸相 |
ズハイル・ハジーム |
2020- |
石油・鉱物資源相 |
バッサーム・タアマ |
2020-;2020年EU制裁対象 |
保健相 |
ハサン・ガッバーシュ |
2020-;2020年EU制裁対象 |
産業相 |
ジヤード・サッバーグ |
2020-;バアス党;2020年EU制裁対象 |
農業・農業改革相 |
ムハンマド・ハッサーン・カタナー |
2020-;2020年EU制裁対象 |
電気相 |
ガッサーン・ザーミル |
2020-;2020年EU制裁対象 |
国務相 |
ムハンマド・ファーイズ・バルシャ |
2020-;共産党;2020年EU制裁対象 |
外務・国外居住者相 |
ファイサル・ミクダード |
2020-;バアス党;2021年イギリス制裁対象 |
国内商業・消費者保護相 |
アムル・サーリム |
元通信相(2006,2007) |
国務相 |
アブドッラー・サッルーム・アブドッラー |
2021年大統領選挙立候補;元議会担当国務相(2016-20);統一社会主義者党;2016年イギリス制裁対象 |
社会・労働問題相 |
ムハンマド・サイフッディーン |
前公共事業・住宅相次官(2012-21) |
情報相 |
ブトロス・ハッラーク |
前ダマスカス大学副学長 |
国務相 |
ディヤーラ・バラカート |
女性 |
(出所)国営シリア通信をもとに筆者作成。
評価
今回の閣僚人事は、大統領選挙後に新内閣を任命するという憲法規定に基づくもので、大統領選挙後の恒例行事である。多くの閣僚が前内閣から留任したなかで国内商業・消費者保護相と社会・労働問題相が変更されたのは、シリア・ポンドの下落による物価高や基本物資不足が深刻な経済問題となっており、これらへの対処が政府の喫緊の課題だからであろう。また、5月の大統領選挙に立候補したアブドッラー・サッルーム・アブドッラーが国務相に任命された。同氏はバアス党体制を支持する政党連合「進歩国民戦線」に属する統一社会主義者党の出身で、大臣経験もある、いわば体制内人物である。大統領選挙に参加したことへの功労賞として大臣職が与えられたとも解釈できよう。
(上席研究員 金谷 美紗)
◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/