№39 アルジェリア:ベンアブドゥルラフマーン内閣の任命
2021年7月7日、タブーン大統領は議会選挙後の新内閣の形成に向けて、6月30日の首相任命に続き、閣僚を任命した。ベンアブドゥルラフマーン内閣は前内閣と同じく、実務者中心の内閣となった。国防相はタブーン大統領が引き続き兼務する。閣僚リストは、以下のとおりである。
表 ベンアブドゥルラフマーン内閣の閣僚リスト
首相兼財務相 |
アイマン・ベンアブドゥルラフマーン |
元中央銀行総裁 2020/6~財務相 |
外務・在外自国民コミュニティー相 |
ラムターン・ラマームラ |
元外相(2013-2017)、 副首相兼外相(2019/3) |
内務・地方自治体・国土計画相 |
カマール・ベルジュード |
2020/1~現在 |
法相 |
アブドゥルラシード・タッビー |
前最高裁判所長官 |
エネルギー・鉱業相 |
ムハンマド・アルカーブ |
2021/2~現在 |
エネルギー移行・再生可能エネルギー相 |
ベン・アトゥー・ジヤーン |
未来戦線党員、大学教授 |
ムジャーヒドゥーン相 |
ライード・ラビーガ |
前ムジャーヒドゥーン省事務次官 |
宗教問題・ワクフ相 |
ユースフ・ベルマフディー |
2019/4~現在 |
国民教育相 |
アブドゥルハキーム・ベルアービド |
元国民教育相(2019-2020) |
高等教育・科学研究相 |
ヤーシーン・メラービー |
2020/6~現在 |
職業訓練・教育相 |
アブドゥルバーキー・ベンズヤーン |
国民建設運動党(EL BINA)副党首 |
文化相 |
ワファー・シャラール |
民主国民連合(RND)議員 |
青年・スポーツ相 |
アブドゥルラザーク・セブガーグ |
前国立巡礼局事務局長 |
デジタル化・統計相 |
ホシーン・シャルビール |
2021/2~現在 |
郵便・情報通信相 |
カリーム・ビービー・タリーキー |
前「アルジェリア・テレコム」社長 |
国民連帯・家族・女性問題相 |
カウタル・クリク |
2020/1~現在 |
産業相 |
アフマド・ゼグダール |
民族解放戦線(FLN)議員 元国民議会財務委員長 |
農業・地方開発相 |
アブドゥルハミード・ハムダーン |
2020/6~現在 |
住宅・都市計画相 |
ターリク・ベラリービー |
2021/2~現在 |
商務相 |
カマール・リジーグ |
2020/1~現在 |
通信相兼内閣報道官 |
アンマール・ベルヒマル |
2020/1~現在 |
公共事業相 |
カマール・ナースリー |
2021/2~現在 |
運輸相 |
アイッサー・ベッカーイー |
前商務相付き貿易担当相 |
水資源・水安全保障相 |
カリーム・ハスニー |
前水関連企業「SEAAL」取締役会長 |
観光・手工業相 |
ヤーシーン・ハマーディー |
前観光・手工業省事務次官 |
保健相 |
アブドゥルラフマーン・ベンブージード |
2020/1~現在 |
労働・雇用・社会保障相 |
アブドゥルラフマーン・ラフファーヤ |
元全国被雇用者社会保険基金(CNAS)事務局長 |
議会関係相 |
バスマ・アズワール |
2020/1~現在 |
環境相 |
サーミヤ・ムワーフィー |
FLN元議員・現党員、弁護士 |
漁業・漁業生産相 |
ヒシャーム・サフィヤーン・サラワーシー |
大学教授、元科学研究局技術開発・イノベーション担当長 |
製薬産業相 |
アブドゥルラフマーン・ラタフィー・ジャマール・ベンバフマド |
2020/6~現在 |
(出所)国営通信「APS」及びニュースサイト「TSA」をもとに筆者作成。
評価
今次内閣の注目点は、実務者が中心であるが、4党から議員又は党員が入閣したことである。連立与党FLNとRNDに加えて、未来戦線とEL BINAのメンバー1名ずつも任命された。各党議席数の合計は過半数(250/全407議席)を上回ることから、4党が議会で大統領支持勢力を形成し、タブーン政権を支えていく見通しである。
閣僚人事について特筆すべき点は、ブーテフリカ政権期の中心人物であったラマームラ氏の再登用である。外交官出身のラマームラ氏は国連代表部大使や駐米大使、外務事務次官を歴任した後、アフリカ連合平和・安全保障理事会委員長(2008~2013)や外相(2013~2017)も務めるなど、国際社会で名の知れた人物である。2019年3月には副首相兼外相に就いたが、翌月にブーテフリカ政権が退陣して以降、同氏も政治の第一線から退いた。
今般、タブーン大統領がラマームラ氏を外相に起用した背景には、彼の豊富な経験と国際的な人脈を活用することで、アフリカ各地の地域情勢でアルジェリアの存在感を示す狙いがあると言える。同国を取り巻く地域情勢には、リビア紛争やマリでの政治的混乱、西サハラ問題がある。いずれもアルジェリアの安全保障に影響を及ぼすことから、タブーン大統領は積極的な関与により、紛争の政治的解決に向けて主導的な役割を果たす考えであろう。その一方、タブーン大統領がブーテフリカ政権関係者に頼ろうとする姿勢は、反政府勢力を刺激する要因となり、抗議デモの活発化につながる恐れもある。
【参考情報】
<中東かわら版>
・「アルジェリア:前倒し下院選挙の暫定結果」No.31(2021年6月16日)
・「アルジェリア:タブーン大統領が新首相を任命」No.37(2021年7月1日)
(研究員 高橋 雅英)
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