中東かわら版

№37 アルジェリア:タブーン大統領が新首相を任命

 2021年6月30日、タブーン大統領は議会選挙を受けて新内閣を任命する一環として、ジェラード首相の後任にアイマン・ベンアブドゥルラフマーン財務相を任命した。ベンアブドゥルラフマーン首相は政党に所属していない実務家である。今後、タブーン大統領は残りの閣僚も選定する予定である。

 組閣の動きが活発化する中、6月30日、イスラーム主義政党・平和社会運動(MSP)のマクリー党首は、12日実施の議会選挙で同派は議会第2党となったものの、連立政権に参加せず大統領支持勢力に加わらない方針を明らかにした。

 

評価

 ベンアブドゥルラフマーン氏は1966年に西部ムスタガーニム県で生まれ、アルジェの国立行政学院(ENA)を卒業した後、財務省の首席監察官や中央銀行監査部長などを歴任した。タブーン政権下で中央銀行総裁を務め、2021年6月の内閣改造で財務相に就任するなど、同政権の経済政策を支える人物である。

 タブーン大統領が同氏を任命した背景には、財政改革を進める狙いがあると言える。財政状況に関して、昨年の油価低迷の影響により財政赤字が対GDP比12.7%(出所:IMF)まで拡大した。今年に入り、油価上昇の恩恵を受け、今年1月~5月の石油・ガス収入は前年同時期の81億ドルから126億ドルへと増加するなど、歳入面は改善しつつある。一方の歳出については、燃料補助金の見直しが進まず、財政改善の糸口が見いだせない状況であることから、タブーン大統領はベンアブドゥルラフマーン氏をより裁量権を行使できる首相に配置することで、財政改革を推進すると考えられる。

 今般の首相人事を踏まえると、この先実務者内閣が発足する見通しだが、同内閣を支える議会での大統領支持勢力の行方も注視される。議会第2党のMSPはすでに不参加を表明したため、民族解放戦線(FLN)及び民主国民連合(RND)は他政党と連立政権を組む必要がある。その場合、2019年大統領選挙でタブーン大統領と戦った候補者が党首を務める未来戦線、もしくは国民建設運動党(EL BINA)が連立相手先となるだろう。ただ、両党とも大統領支持勢力に加わることに難色を示す可能性があり、連立交渉が決裂すれば、政治過程が行き詰まることもあるだろう。

 

【参考情報】

<中東かわら版>

・「アルジェリア:前倒し下院選挙の暫定結果」No.31(2021年6月16日)

(研究員 高橋 雅英)

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