中東かわら版

№16 リビア:リビア・ムスリム同胞団のNGO転換

 2021年5月2日、リビア・ムスリム同胞団(以下、リビアMB)は、組織名を「再生と革新」に変更するとともに、政治集団からNGOに転換するとの声明を発表した。同声明によると、NGO転換の目的は、イスラームの中道的なアプローチに従うとの組織の使命を復活させることである。新組織は今後、様々な公の場での活動を通じて社会にメッセージを伝えていくとみられる。

 また、リビアMB政治部門「正義建設党」に所属するアブドゥルラッザーク・シールガン氏は『アナトリア通信』に対し、リビアMBはNGO転換後、活動をリビア国内に限定し、国外のムスリム同胞団と連携しない方針を明らかにした。

評価

 1949年創設のリビアMBはカッザーフィー政権期に弾圧を受けていたが、2011年の同政権崩壊後、公に政治活動を開始した。そして「正義建設党」が2012年7月の制憲議会選挙で議会第2党となり、その後も国民合意政府(GNA)の中心勢力となるなど、リビアMBは2011年革命以降、一定の政治的影響力を保持してきた。

 今般のNGO転換の背景として、①組織としての生存戦略と、②組織再建が挙げられる。まず、現在多くの中東諸国の政府が反同胞団の立場をとることから、リビアMBは改名を通じて各地の同胞団勢力との繋がりを断ったとアピールしたいと思われる。同胞団を敵視してきたハフタル勢力や、反同胞団政策としてリビア紛争に介入したエジプトやUAEに対し、自らへの攻撃根拠を与えないことを目論んでいる。

 次に、リビアMBでは2019年1月にメンバーであったミシュリー国家高等評議会議長が組織から離脱し、2020年には同国西部のザーウィア及びミスラータ支部が相次いで閉鎖するなど、組織弱体化の兆しがみられる。こうした状況下、2021年3月にGNAが国民統一政府(GNU)に政府権限を移譲したことで、リビアMBの政治的影響力が更に低下する可能性が出てきた。そのため、いったんNGOに転換して慈善活動を通じて支持層の拡大を図り、今年12月の総選挙に向けて組織再建を進めていくと予想される。

 今後の展望として、「再生と革新」の脱同胞団化が支援国トルコのリビアへの介入度合いに影響を及ぼすかが注目される。トルコの介入背景にはカタルと同様、同胞団理念への支持があると指摘される。その一方、トルコの場合、カッザーフィー前政権時からの経済利権の維持や東地中海でのエネルギー資源の獲得、そしてトルコ系リビア人との民族的な紐帯も介入要因となっている。したがって、トルコは仮に「再生と革新」との繋がりがなくなったとしてもリビア紛争から手を引かず、同国部隊をリビアに駐留させることで新政府GNUの政権運営にも大きく関与していくと考えられる。

(研究員 高橋 雅英)

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