№143 ヨルダン:内閣改造(ハサーウナ第2次内閣)
アブドッラー2世国王は、2021年3月8日付の国王令において内閣改造を命じた。新大臣の顔ぶれは以下の通りである。
氏名 |
役職 |
備考 |
ムハンマド・ナッジャール |
水・灌漑相 |
元水・灌漑相(2009-2011)、元上院議員 |
アリー・アーイド |
文化相 |
駐米・駐イスラエル大使を歴任。前メディア担当国務相 |
ワジーフ・アザーイザ |
運輸相 |
元社会開発相(2011,2012-2013,2016) |
アフマド・ジヤーダート |
法相 |
元首相府担当相(2013-2016)、前法律担当国務相 |
ハーリド・ハニーファート |
農相 |
元国務相(2016)、元農相(2018) |
ムハンマド・ハイル・アブー・クダイス |
教育相兼高等教育・科学研究相 |
高等教育・科学研究相を留任、教育相を新たに兼任 |
マフムード・ハラーブシャ |
法律担当国務相 |
前国務相 |
サフル・ダウディーン |
メディア担当国務相 |
元上院議員 |
マージン・ファラーヤ |
内相 |
元軍人、前治安・危機管理センター次官 |
(出所)ペトラ通信などを元に作成。
評価
ヨルダンでは従来から実務家・官僚経験者が大臣に任命される傾向にあるが、今回も同様の傾向が見られる。そして、今回の内閣改造で、閣僚数が32名から30名に減少した。無任所大臣のポスト数も削減され、国務相、経済問題担当国務相、行政パフォーマンス向上担当国務相、投資担当国務相のポストが廃止された。これは、大臣数を少なくし、実務経験豊富な人材を入閣させることで、ワーキング・ガバメントの形成を図ったものと考えられる。
また、駐米・駐イスラエル大使を歴任したアリー・アーイド氏がメディア担当国務相から文化相に転任した。近年、エルサレムのアクサー・モスクのヨルダン側の管理権を巡って、イスラエルとの間で緊張が高まっている。文化遺産であるアクサー・モスクを巡ってイスラエルとの交渉が避けられないことから、イスラエルとの交渉経験が豊富な人物を任命したものと考えられる。
さらには、治安・危機管理センターで新型コロナウイルスの感染拡大に関する危機管理を担当していたマージン・ファラーヤ氏が内相に任命された。これは、ヨルダンにおいてなお感染者が増加し続けており(現在、感染第2波。3月8日の新規感染者数は7413人)、早期のワクチンの接種や、感染防止対策と経済の両立が課題となっていることを踏まえた人事と考えられる。
(研究員 井森 彬太)
(上席研究員 金谷 美紗)
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