中東かわら版

№122 イラン:革命防衛隊が韓国船籍タンカーを拿捕

 2021年1月4日朝、イラン・イスラーム革命防衛隊はペルシャ湾沖で韓国船籍の石油タンカーHANKUK CHEMIを拿捕したと発表した。同発表によると、タンカー拿捕事由は「海洋環境法の度重なる違反」であった。

 HANKUK CHEMIは、7200トンの石油化学製品(注:エタノールとの報道がある)を積載し、ジュバイル港(サウジ)からフジャイラ港(UAE)に向けて航海していた。乗組員は、韓国、インドネシア、ベトナム、ミャンマー国籍を含む20名と報じられており、今後、乗組員の解放に向けた交渉が当事国にとって喫緊の課題となる。革命防衛隊は、同タンカーを南部バンダル・アッバース港に移送し、イラン国内法規に基づき裁くと明らかにした。

 

地図 拿捕現場周辺地図

(出所)筆者作成

 

 これに対し、4日、韓国外交部は韓国船籍が拿捕されたことを認め、早期の解放を求める旨の声明を発出した。同時に、韓国国防部は、付近の海域で自国船舶の保護のために活動してた海軍の艦船を現場に向かわせた。また、米国は韓国に同調する立場を示している

 

評価

 米国とイランとの間で軍事的緊張が依然高い状況下、ホルムズ海峡の航行の安全は日本を含む国際社会にとって重大な関心事項である。そうした中、今般の事件は日本の海運や貿易活動にとっても対岸の火事ではない注目すべき事案である。4日、イランのハティーブザーデ外務報道官は、本件は「完全に技術的」なものだとして、政治的意図に基づく行動であることを強く否定した。今般の事件が発生してから、イランと韓国の間にある凍結資産問題(注:米国の制裁によって海外移転できなくなった、韓国内に滞るイラン資産を巡る問題)が事件の背景にあると見做す向きもある。しかしながら、これまでに発生した革命防衛隊による外国籍タンカー拿捕事案の多くは、イラン・米国間の軍事的緊張がペルシャ湾で高まる状況下で発生している点にも留意を要する。不測の事態が懸念される状況ではあるが、このような時にこそ本件のような当事者同士の主張が異なる事案については、予断や憶測に基づかない、冷静且つ客観的な事実関係の見極めが必要である。

 

【参考情報】

*関連情報として、下記レポートもご参照ください。

 <中東かわら版>

・「イラン:革命防衛隊による外国籍タンカーの拿捕」2019年度No.66(2019年7月19日)

・「イラン:革命防衛隊による外国籍タンカーの拿捕#2」2019年度No.67(2019年7月22日)

(研究員 青木 健太)

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