中東かわら版

№120 イスラエル:第23期クネセトの解散、再び総選挙へ

 2020年12月21日、国会(クネセト)で国家予算案の提出期限を12月31日に延期する法案の採決が行われ、賛成47、反対49で否決された。予算案の提出期限は23日であったため、予算不成立により内閣は総辞職となり、22日深夜、国会は解散された。次期内閣が成立するまで引き続きネタニヤフ首相が首相を務める。

 イスラエルでは、2019年4月に総選挙が行われて以来、主要政党間での連立交渉が失敗しつづけ、同年9月と2020年3月にも総選挙が実施された。国会解散により90日以内に総選挙を実施しなければならないため、次期総選挙は2021年3月下旬頃に行われる見通しである。したがって、イスラエルは2年間で4回の総選挙を行うことになる。また、2020年を通して2020年度予算が成立しないまま終わるという異常事態となった。

 今回の予算案を巡る対立は、連立政権を組むリクード党のネタニヤフ首相が2020年度の単年予算の成立を目指したのに対し、青と白連合のガンツ副首相兼国防相が2021年までを含む2年間の予算を要求したことに起因する。2年間予算を組むことで、5月の連立合意で決められた通り、2021年11月にネタニヤフからガンツへ首相職を交代することを確実にするためである。また、ネタニヤフ首相とガンツ副首相兼国防相は、予算案の他にも司法高官の任命を巡って対立している。汚職問題で起訴されているネタニヤフ首相は、自身の政治生命にとって不都合な判断を下す検察や裁判所を批判しており、司法人事の決定方法の修正を迫っている。

 

評価

 イスラエルがアラブ諸国と次々に国交正常化合意を進めていく一方で、内政ではひどく混乱した状況が長期にわたって続いている。連立形成の失敗と正式な予算なき財政運営、そして新型コロナウイルスの感染拡大封じ込めの失敗である。これらに大きく影響を及ぼしているのが政党間対立である。

 右派・左派を問わず多くの政党は、汚職問題で起訴されているネタニヤフ首相が首相職を続行することや、首相が汚職事件を捜査する検察や裁判所を「左派の企み」と非難する行為を批判している。反ネタニヤフの動きは右派内部でも起こり、リクード党からギデオン・サアル氏が12月に新党「新しい希望」を結成し、ヤミーナ党(2019年結成)のナフタリ・ベネット党首もネタニヤフ政権に代わる新政権の樹立を目指している。したがって、3月に行われる見通しの総選挙でネタニヤフが首相続投となる確証があるとは言えない。右派・左派ともに政党の合従連衡や政治家の政党移籍が頻繁に行われるイスラエルでは、総選挙までに政党間の関係が変わることも予想される。

(上席研究員 金谷 美紗)

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